日本企業が見落とす
市民社会への配慮

 サステナビリティー関連のNPOやNGOからの書簡に対して、「回答なし」を続けることが、どれだけステークホルダーの信頼を損ねるかというリスクに、日本企業はもっと敏感になった方がいい。

 もちろん大小さまざまな市民社会セクターから寄せられる多種多様な質問状に真摯に対応しようとすると手間がかかるし、中にはクレーマーに近い問い合わせも多くあるはずだ。だが一方で、今回の新疆ウイグル自治区の問題のように、大きな社会問題に関する問い合わせに何も反応しないことが、企業にとって大きなデメリットとなることが時にはあるのだ。

 日本企業の広報やリスクマネジメント部門は、丁寧に回答すべき案件と、そうではないものを見極める力が必要になる。そして今回のウイグル問題は、日本のエレクトロニクス企業にとっては間違いなく、丁寧に回答すべき案件だ。

 米国はウイグル人権侵害に加担する企業への制裁を迅速に講じており、その対象はアパレル企業だけでなく、画像解析技術を持つエレクトロニクス企業にも及んでいる。

 市民・行政からの認知度の高い消費財のトップブランドが機敏に反応したことで、投資家も高く関心を寄せるようになった。そして投資家は消費財だけでなく、エレクトロニクス企業がどう対応するのかも冷静に見極め始めている。

 エレクトロニクス企業の人権リスクへの視線は、近年急激に強まっている。だがその事実に、多くの日本企業が気づいていない。

 ビジネスと人権に関する国際的なイニシアチブの代表格「コーポレート・ヒューマンライツ・ベンチマーク(CHRB)」は、18年までは農業やアパレル、資源採掘の100社を格付けしていた。しかし19年にはエレクトロニクス関連の製造業を加えて、評価対象を200社に拡大している。新たに評価対象となった日本企業の中には、東京エレクトロンやキヤノン、日立製作所、任天堂、京セラ、HOYA、キーエンスなどが含まれている。

 ちなみにCCHRBが「ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)」に組み込まれる点には各社とも注目する必要がある。WBAは、世界2000社のSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献度を評価する、世界的ベンチマークを23年に完成させる予定になっているからだ。