中原 自動車会社からサービスまでも視野に入れたモビリティカンパニーへの拡張というのは非常に大きな転換だと思いますが、なぜカンパニー制を導入するのが最適とお考えになったのでしょうか。
原田 最も大きな理由は「スピード感」を速めるためです。先ほど挙げたGoogleやテスラなどの特徴は、スピードがものすごく速いということです。意思決定のスピードも速いし、新しいものを生み出すスピードも速い。これにどう対応するかという話し合いの中で、「小さなトヨタ」という構想がまず出てきました。会社をいくつかのバーチャルな単位に割って「小さなトヨタ」をつくることにより、調整工数を少なくして意思決定を速められないか。ここからスタートして、最終的にはカンパニー制の導入で話がまとまりました。
カンパニー制移行で、
意思決定のスピードが短縮
中原 カンパニー制に移行した当初、現場の方々の反応はどうでしたか。
原田 そうですね。どうしても割ることによる非効率な部分に目が行きがちですから、なかにはネガティブな従業員もいたと思います。
とくに当社の場合は、過去のアレルギー反応みたいなものがありました。1990年代の終わり頃から技術部門を3つの「センター」に分けて運営したことがあり、そのとき言われたのが非効率の問題、あるいは人材育成の問題でした。要はそれぞれの「センター」の中に人材が囲い込まれてしまい、組織の部分最適によって業務効率が阻害されたり、育成の機会に恵まれにくくなったりと、十分には機能しないところがありました。カンパニー制への構想が出た当初は、その反省というか、「また割るのか」という空気があったように思いますね。
中原 実際にカンパニー制が動き出してみて、どんな効果を実感されていますか。
原田 前述のセンター制は技術部門単独で行った分割でしたから、メリットが必ずしも享受できなかった。しかし今回は、生産部門を含めてカンパニー制に移行したので、以前よりも技術と生産が一体感を持って動けるようになりました。その結果、かなりスピード感が出てきました。
中原 体感的に、どれくらい速くなったと?
原田 業務の内容にもよりますが、必要時間の半減くらいのイメージはあると思います。とくにカンパニー内で決められることに関しては、意思決定までのスピードが大幅に短縮できたという手応えを感じています。