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菅政権が発足し、1カ月で続々と政策を打ち出している。しかし、政権の目的は「政策実現」ではない。国民にとって「いい政策」が聞こえてくるが、菅政権の最終的な目的は「国民統制」ではないかということが、既に見えてきている。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

安倍前政権は目的=政策実現、手段=権力集中
菅政権は逆になった!?

 菅義偉政権が「安倍政治の継承」を掲げて発足してから1カ月がたった。だが、安倍晋三前政権とのはっきりとした違いが見えてきた。それは、菅政権では、政権が「目的」とすることと、その実現のための「手段」が、安倍前政権時代と入れ替わっていることだ。

 安倍前政権では、首相の「やりたい政策」というものが前面に掲げられていた。まず、首相の悲願であった「憲法改正」(本連載第169回)だ。次に、「特定秘密保護法」(第72回)、「安保法制」(第115回)、「テロ等準備罪(共謀罪)法」(第160回)などの安全保障関連の法律の整備であった。

 また、それら「やりたい政策」を実現するために、内閣支持率を維持する経済政策「アベノミクス」(第163回)、「一億総活躍」(第138回)、「働き方改革」「女性の社会進出」(第177回)、「教育無償化」(第169回・p3)などの国内政策も次々と並べられた。これらの政策を実現が、安倍前政権の「目的」だった。

 そして、その「目的」を実現するための「手段」が、菅官房長官(当時)を中心とする首相官邸への権力集中だった。在任期間が歴代最長だった菅官房長官は、毎年約10億~15億円計上される官房機密費や報償費を扱い、内閣人事局を通じて審議官級以上の幹部約500人の人事権を使い、官邸記者クラブを抑えてメディアをコントロールし、官邸に集まるありとあらゆる情報を管理した(第253回・p5)。

 官邸に集まるヒト、カネ、情報を一手に握った菅官房長官が行ったことは、「森友学園問題」(第178回)、「加計学園問題」(第158回)、「桜を見る会」(第233回)、「南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の“日報隠し”問題」(第179回)、「裁量労働制に関する厚労省の不適切な調査データの問題」(第177回)などの公文書の改ざん、隠蔽、破棄、そして「前法相夫妻の逮捕」などのスキャンダルの悪影響が広がることを抑え込むことだった。

 要は、政策の実現という安倍政権の「目的」を妨げるものを排除していく「手段」として、菅官房長官は、絶大な権力を掌握して、それを行使したといえる。

 一方、菅政権では、官僚、メディアを掌握し、国民を統制すること自体が政権の「目的」のようだ。そして、政策はその目的達成のための「手段」として打ち出されているように見える。