パイプライン型から始めてプラットフォーム型へ移行したRetty

フィージビリティと<br />スケーラビリティのジレンマを<br />どう解消したらいいのか?田所雅之(たどころ・まさゆき)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動する。日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、ウェブマーケティング会社ベーシックのCSOも務める。2017年、スタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。著書に『起業の科学』(日経BP)、『御社の新規 事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『起業大全』(ダイヤモンド社)がある。

 パイプライン型からプラットフォーム型展開の国内の成功事例として挙げられるのは、日本最大級の実名型グルメサービスのRetty(レッティ)だ。

 レストランがたくさん載っていなければグルメな人は登録しない、また、グルメな人がたくさん登録していなければレストランも登録しないというまさに「ニワトリとタマゴのジレンマ」にぶち当たってしまう。

 2011年の立ち上げ当時は、食べログ、ぐるナビなどのすでにスケールしている競合もいた。そこでRettyが目をつけたのは、グルメな人が、携帯のアドレス帳などにこれまで行ったレストランを書き留めていたことだ。

 ならば、レストランのログを簡単に残せるアプリを展開したらどうかと考えた(グルメな人たちは、気に入ったレストランを携帯やスマホのアドレス帳に登録していたが、この作業に手間がかかった)。

 このアプリが刺さってグルメな人たちは、備忘録としてRettyを使い出した。

 そして、ある程度グルメな人の数がたまった段階で外部に開放した。そこから、ティッピングポイント超えを目指して、その後数年でユーザー数が4000万人を超えるまでスケールしたのだ。

 他の事例としては、2009年に上場したレストランのオンライン予約を行うアメリカのOpenTable(オープンテーブル)が挙げられる。彼らの戦略も、パイプライン型からプラットフォーム型展開だった。本来なら手数料の取れる便利な予約管理ツールを無償でレストランに配ったのだ。プラットフォームに十分な数のレストランが集まった段階で、消費者サイドにアプローチし獲得していって、両者のマッチングを図ったのだ。

 ブロガーの集まるキュレーションサイトのHuffPost(ハフポスト)も、当初は、ライターを雇って高品質なブログを投稿することで読者を呼び込んだ。日本におけるnoteのような使い方をされているMedium(ミディアム)も、最初に優秀な執筆陣を雇い入れ、記事のクオリティが高いというイメージを確立してから読者や執筆者を呼び込んだ。

 このようにパイプライン型から始めてプラットフォーム型へ移行していった事例は枚挙にいとまがない。