課長に直談判するも…

 夕方、A係長はB課長と面談を行い自身の月次売り上げ報告を行うと、B課長は不機嫌な顔で言った。

「何だ、今月もノルマを達成できなかったのか?もう3カ月連続だぞ。課員のお手本にならなくてはいけない君がそんな調子じゃ困るねえ。おまけに他の課員も誰一人私が設定したノルマを達成していない。全員努力が足りないんじゃないの?」

 A係長は言い返した。
「コロナの影響で取引先が営業停止や自粛している関係で、当社への商品注文が著しく減少しています。課員の努力うんぬんより、ここはしばらく様子見かと思うのですが…」

 その言葉にB課長はキレた。

「コロナもヘッたくれもあるか!そんな言い訳するヒマがあったら商品を売ってこい!」
「そう言われてもこの状態では売りようがないですよ。課員全員がB課長のやり方に困惑しています。もしノルマを達成するいい方法があったら教えてください」
「うるさい!そんなの自分で考えろ!!」

 この言動が原因でB課長の怒りを買ったA係長は、次の日から毎日、就業時間後にB課長に呼び出された。そして「今日はいくら売ってきたんだ?」に始まり、結果に関係なく「とにかくもっと売ってこい!」「絶対ノルマを達成しろ!」。

 揚げ句の果てには「このマヌケ野郎!」「アホ!」等の激しい叱責を受けることになった。

「いっそ自分で商品を買って差額分を埋めろ!」

 7月になると、顧客が徐々に営業を再開し、それに従って課内の売り上げも回復の兆しを見せ始めたが、昨年までにはまだ程遠い状態でB課長の設定したノルマを達成することはできなかった。そして月末、A係長の月次売り上げ結果を見たB課長は、怒鳴り散らすだけでは飽き足らずある提案をした。

「なあ、ノルマが達成できなかったら、いっそ自分で商品を買って差額分を埋めればいいじゃないか」

 A係長は目を丸くした。

「えっ?私がソープやシャンプーを購入するんですか?そんなお金ありません」
「じゃあどこかで借金すればいいじゃないか。何なら金融業者を紹介してやろうか?とにかくノルマは絶対に達成するんだぞ。わかったか!」

 無理難題を突き付けられたA係長は、その後会社を辞めることも考えたが、B課長から連日受けていた仕打ちのせいで再就職活動をする気力は残っていなかった。そこで仕方なく会社に残るために多額の身銭を切って商品を購入したが、すぐに貯金は底を突きクレジットカードでキャッシングをするようになった。