急速に国際化が進む「開成」は何を目指しているのか留学は、異文化に触れ多様性を理解する貴重な機会。少人数制のエッセイ・英作文講座を開講するなど、支援体制も充実している 写真提供:開成学園

名古屋大学での経験を開成でも生かしたい

――これから開成の諸君が海外に行き出すとまた変わるでしょう。一方で東大合格者実績も維持しないといけない。学校として両立するのは大変でしょうけれども(笑)。

野水 開成に限らず、日本の若者にどんどん留学を目指してほしいなと思っています。とはいえ、直接海外トップ大学に入学するには相当厳しい条件がありますので、そんなに数が伸びるとは思いません。

 それでも、TOEFL iBT(R)の100点を目指して勉強し、少なくとも80点を超えると、日本の大学でも交換留学制度を充実させていますので、入学後、海外の大学に半年、1年行ってまた戻ってくるという仕組みにすぐ乗れます。英語力を伸ばすことにはそういう面でもメリットがあると思います。

 実際、名古屋大学で送り出した学生を見ても、とにかく半年でも1年でも留学を経験すると、人間が一回りも二回りも変わって成長して帰ってきます。英語力を伸ばすということだけではなく、海外で自分がマイノリティー(社会的弱者)として、勉学・生活する苦労を経験し、視野を広げて異文化に触れ、多様性を理解することの重要性を体験します。そして、相手の立場を理解しながら、自分の意見を伝えるためのコミュニケーション力、リーダーシップ力を持つことが培われます。日本に閉じこもっていたら、やはりこれらの点について、なかなか理解が及ばず、能力を伸ばす機会が少ないと思います。ぜひ、卒業した多くの生徒にそうした経験をしてもらいたいと思いますね。

――校長職をお引き受けになるとき、こういうことをやりたいなと思われた中で、そこはかなり大きな点でしょうか。

野水 その通りです。元々は化学分野の研究教育者でしたけれど、名古屋大学で国際交流の仕事をやってきて、交換留学、留学生受入、海外留学派遣、そしてそれらの教育プログラムを推進する留学生教育学会という学会の会長も6年ほど担いました。中学校や高等学校のレベルでの英語教育の強化や国際化に取り組む、という形で貢献していることが、留学生交流や国際交流に係る高等教育機関の先生方への励みになっていただければと思います。

――今後は開成もいろいろ変わられるのでしょうけれども、名古屋大学で取り組んでおられたことは、今後どういう方向で続けられるのですか。

野水 名古屋大学では交換留学生の受入プログラムを中心に活動していましたけれど、交換留学制度で協定を結んだ海外の大学に学生を送る手伝いもしていました。

 長年にわたり、一生懸命PRをして、学生へ留学を勧めたのですが、なかなか実現してくれる学生が増えませんでした。いろいろな理由が挙げられますが、大きな要因の一つがやはり英語力にありました。