ワークマンを大ブレークさせた新業態「ワークマンプラス」。その立役者である土屋哲雄・ワークマン専務は、創業者の兄の息子でもある。特集『ワークマンを生んだ群馬の野武士』(全7回)の#4では、「カインズは『知の探究』、ワークマンは『知の深化』」と評する哲雄氏に、ワークマンとベイシアグループとの付かず離れずの関係性を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)
ベイシアグループのDNA
ワークマンを成長させた「しない経営」
――三井物産からワークマンに転じた土屋専務から見て、ベイシアグループのDNAをどんな場面で感じますか。
カインズ以外は基本的に、余計なことを「しない経営」です。ベイシアはディスカウンター系の小売りの中でも、商品の値段が安い割に店内が非常にきれい。あれは「捨てる経営」で、どれを捨ててどれを立てるかの取捨選択をしっかりやっている。
もう一つのDNAは、在庫への警戒感の強さです。ただワークマンは在庫を警戒し過ぎていたので、今は商品投入から1年目の在庫は残してもいい、2年続けて残さないという方針に変わりました。
――専務がワークマンに入社した2012年時点では、ワークマンに数量データがなかったそうですね。
そうです。決算があるため金額のデータは取得するけれど、数量は決算に関係ないから要らないと。店舗の在庫はSV(スーパーバイザー)が数えていた。ワークマンの「しない経営」では、活用しないならばデータ自体を取らないんです。加盟店からは「アナログワークマン」と言われていました。ですが、今は“デジタルワークマン”に変わっています(笑)。
――カインズもワークマンもデータ活用という方針は共通です。ただカインズは「IT小売業」を目指し、ワークマンは「Excel経営」を目指すように、方向性が違うと感じました。
DX(Digital Transformation)のうち、カインズは「D(デジタル)」、ワークマンは「X(トランスフォーメーション)」にしか興味がないという違いでしょう。
カインズは戦略をがちがちに決めていて、その戦略に基づくデジタルがあるんです。東京の表参道にビルを借りてコーヒーショップをつくるのも戦略ありき。
一方、ワークマンはトランスフォーメーションを重視します。新業態の「#ワークマン女子」は、テスト店舗で1、2店出せばいいかと思っていた。それなのに、アドバルーンを上げてみると開店前から驚くほど反響があった。そこで、「400店出す」と言いました。こんな不確実な世界で、計画もへちまもない。ワークマンは声のする方に進化していきます。