群馬の野武士#6Photo by Rumi Souma

ベイシアグループの祖業、いせやを前身とするベイシアの本拠地である北関東は、ヤオコーやベルク、イズミなどがひしめく生鮮スーパーマーケット激戦区だ。そんな中、ベイシアはあえて競合のコストコを自社モールに誘致した。特集『ワークマンを生んだ群馬の野武士』(全7回)の#6では、出店場所を不動産会社に任せる企業が多い中、立地について自前で分析を続けてきたベイシアのデータ戦略を追った。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

低価格でも営業利益率は4.4%
効率化を突き詰めるベイシアのデータ活用

 群馬県の北関東自動車道・前橋南インターチェンジ。高速道路の出口を下りていくと、GAPやGU、TSUTAYAなど有名企業の大型店舗がずらりと並ぶ光景が目に飛び込んでくる。

 ここは群馬を拠点とする中堅生鮮スーパーマーケット、ベイシアの看板商業施設「パワーモール前橋みなみ」だ。オープンは2010年。約23万平方メートルと北関東で最大級の敷地に、ベイシアの“スーパーセンター”業態である「前橋みなみモール店」の他、ホームセンターのカインズやベイシア電器などグループ企業の店舗が集結する。

 ベイシアの躍進は、「スーパーセンター」という業態を始めた2000年から始まった。スーパーセンターとは、「衣・食・住」のフルラインをワンフロアにそろえる店舗形態で、米ウォルマートが先駆け。商圏が10キロメートルと、通常のスーパーマーケットよりも広域なことが特徴だ。ベイシアの売上高は、スーパーセンター1号店ができてから14年の消費増税時までに3.6倍になっている。

 ベイシアの強みは低価格だ。もともと生鮮小売りは薄利多売の業界である。例えばスーパーマーケット大手のライフコーポレーションの粗利率は29.4%で、業界平均は30%前後。こうした中で、ベイシアの粗利率は24.3%と5ポイント以上低い。

 それにもかかわらず、ベイシアの営業利益率は4.4%。ライフの2.0%や同業他社の平均1%前後と比べると驚異的な数字だ。

 薄利の中でも利益を確保するため、ベイシアはコストカットを重視する。コストカット・効率化の専門部署「作業改善部」が存在するほどだ。この効率化を突き詰めるために、データ活用にも積極的に取り組んでいる。

 その象徴ともいえるのは、パワーモール前橋みなみにテナントとして入居する米会員制スーパーマーケット大手、コストコだ。ベイシアのモールにもかかわらず、あえて競合のコストコを誘致した効果を分析したところ、ベイシアの今後の成長のヒントが見えてきた。