群馬の野武士#1Photo by Rumi Souma

ワークマンとカインズが兄弟会社であることを知る人は少ない。M&Aをしない自前主義で“1兆円組”の仲間入りを果たした群馬県のベイシアグループ。その勢いはとどまるところを知らず、三越伊勢丹ホールディングスの背中が見えてきた。快進撃の背景にあるのは、シナジー無視の経営手法だ。特集『ワークマンを生んだ群馬の野武士』(全7回)の#1は、創業家によるオーナー企業で、ベールに包まれていたベイシアグループの強さの秘密に迫る。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

ついに高島屋超えで国内7位
群馬の雄が1兆円企業に仲間入り

「1兆円企業にする」――。

 1958年、群馬県伊勢崎市で創業した衣料小売店「いせや」。創業者の土屋嘉雄氏は、企業が成長の軌道に乗った70年代からこう豪語するようになったという。

 時は流れ2020年11月。いせやをルーツとするベイシアグループの同年の売上高は1兆円の大台を突破。悲願であった“1兆円企業”の仲間入りを果たした。

 今や日本の小売業でベイシアグループよりも規模が大きいのはイオン、セブン&アイ・ホールディングス、ファーストリテイリング、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、ヤマダホールディングス(旧ヤマダ電機)、三越伊勢丹ホールディングスの六つしかない。既に高島屋やエイチ・ツー・オー リテイリングを追い抜き、もはや三越伊勢丹ホールディングスの背中に手が届く位置に来た。

 グループの名を冠するベイシアは北関東を中心に展開する生鮮スーパーマーケットであるため、全国的な知名度は低い。しかしベイシアグループには絶好調のワークマンやホームセンター業界首位のカインズなど、個性あふれる優良企業が名を連ねる。

 群馬のローカル企業は、いかにして1兆円グループへとのし上がったのか。その背景にはグループ内の兄弟会社のシナジーをあえて無視する“バラバラ経営”があった。