2020年の経済ショックは今年の株式市場に対する畏怖の念をもたらしたが、多くの投資家はまだ頭が混乱している。たとえ2007年に高値で株式に投資し、過去100年で最悪の金融危機と最悪の感染症流行の間ずっと保有していたとしても、リターンは過去1世紀の標準を上回るというのだから、謎は深まるばかりだ。一体何が起きているのか?その答えは株の長期保有を考える投資家をひるませるだろう。株投資は今のところ大勝だが、その主な理由は企業収益の改善ではなく、ゼロに近い低金利のおかげだからだ。同じことが今後10年間に繰り返されるとは想像しにくく、将来のリターンは良くても平凡な水準になる可能性が高い。数字で例を挙げよう。2007年10月にS&P500種株価指数に投資し、リーマン・ブラザーズが破綻しても平静を保ち、繰り返すパニックを無視したとすると、新型コロナウイルスの大流行を経て、年率換算でインフレ率を7.3%上回るリターン(配当含む)を手にする。これは、クレディ・スイスと共同で3人の研究者(エルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・ストーントンの各氏)が算出した1900年から今年初めまでの米株の実質リターンである年率6.5%を上回り、戦後(1950年から今年初めまで)の実質リターンである年率7.4%とほぼ等しい。その間に米経済に第2次世界大戦後で最悪の打撃を与えた金融危機と感染症大流行を経験したにもかかわらずだ。