坂倉芳明さんは、西武百貨店の社長と三越百貨店の社長を務められました。もともと三越出身で、当時の岡田茂社長と対立して三越をやめ、西武百貨店の社長となり、三越の御家騒動の後、今度は三越に戻ってまた社長。ドラマでも見ないような人生です。

「三越は新入社員からいましたから、社員それぞれの個性がわかるので経営は『将棋』でした。西武では、誰が誰かもわからないので、性格は抜きにシロかクロということで判断しましたから、まるで『囲碁』でした」

 私もずっと同じ会社に勤務していたので、今、大学という新しい職場で「囲碁」に挑んでいます。「将棋」人生も面白いですが、「囲碁」人生も面白いものです。ただ、私の職場は教育。「囲碁」で済まさず、それぞれの個性を掴む「将棋」に戻らなければなりません。

三菱重工会長の秘話
「社員は奥様に救われた」?

 対談では、経営者の奥様の話を必ず聞くことになっていました。

 三菱重工の飯田庸太郎会長の奥様の話。

「毎朝家を出るときに『絶対怒っちゃだめですよ』と注意されます。そして帰宅したら必ず『今日は怒りませんでしたか?』とチェックされます」

 三菱重工のサラリーマンは、何人奥様に救われたでしょうか。

 三井不動産の江戸英雄さんは、ディズニーランドの生みの親でもあります。サラリーマン時代、青山の幼稚園に寄寓。そこの1人娘にほれ込んだそうです。

「ぼくは次男坊だから、養子になってもいいと申し出たら、お母さんの園長さんから、養子は真っ平ごめんだ、といわれました」

 相手はまだ小学校6年生、江戸さんは12歳年上。一人娘がお茶の水の女子校から上野の音楽学校(現東京芸術大学)でピアノ科を出るまで待って、結婚したといいます。

「出来はいいし、よく勉強しているし、私は田舎者だから、都会的なところに惹かれたのでしょう」

 偉い人は照れないものです。