国土交通省は、「残価設定型」のローンの普及に向け、2021年度にも民間の金融機関が参加するモデル事業を始めると発表した。これが実現すれば、住宅市場の未来は激変するだろう。その理由を解説する。(スタイルアクト 代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
国策の「残価設定型」住宅ローン、
その狙いは?
先日、「住宅に残価設定ローン、返済負担を軽減 官民で開発」という新聞記事があった。最初、「これは誤報だろう」と私は思った。
「残価設定型」住宅ローンは、借入額と将来の住宅価値の差額のみを返す仕組みだ。こうした残価設定型住宅ローンの普及に動き出すというような話は、銀行単体では到底できない。バブル経済時の不動産価格の高騰と貸出によって、銀行が破綻・再編された経緯があるからだ。
しかしこれが国策であれば、非常に大きな可能性を秘めている。ぜひに実現してもらいたいものでもあるし、これがあれば、住宅市場の未来は激変するだろう。
国土交通省は、「残価設定型」のローンの普及に向け、2021年度にも民間の金融機関が参加するモデル事業を始めると発表した。これにより、資産性がある住宅は返済負担が小さくなるので、家計に優しく、その分、消費が活性する可能性が高い。ここが、国策の最大の狙い目になる。
問題は、ローンが満期を迎えた際に、残価を返済していないことだ。つまり、まだ借入は残っているので、売却するか、住み続けるなら再度ローンを組む必要がある。
私が最初「誤報だ」と思ったのは、銀行が買い取ることが事実上、不可能だからだ。買い取ることは不動産会社しかできない。買い取りを不動産会社が行う残化設定型住宅ローンはすでに存在しているのである。