総予測#12
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コロナ禍は不動産市況にも大きく影響した。オフィスの空室率は上昇し、賃貸住宅市場も一部の好立地物件を中心に稼働率が低下している。特集『総予測2021』(全79回)の#12では、2021年の不動産市況について分析した。21年にかけて不動産価格の調整は不可避だが、下落幅は小幅にととどまりそうだ。(日本不動産研究所主任研究員、不動産エコノミスト 吉野 薫)

「週刊ダイヤモンド」2020年12月26日・2021年1月2日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

コロナ過が直撃した
宿泊施設と商業施設

 2020年夏以降は景気が持ち直しに転じている。わが国においては自動車産業を中心として工業生産が足早に回復し、輸出はコロナ禍以前の水準をほぼ取り戻した。

 もっとも、感染症拡大が継続する間に、企業や家計の心理は冷え込んだ。景気の水準が低い状態が当面続きそうだ。日銀短観の企業の設備投資計画を見ると、20年度の計画は調査時点を経るごとに縮小した。

 消費動向調査からは、家計の雇用に対する不安感が強く、不安解消も進んでいないことが分かる。ここから、21年以降の不動産市場は実需の盛り上がりを欠くと類推できる。市況の調整局面が一定期間にわたって続く可能性が高い。

 コロナ禍の直接の影響を受けた宿泊施設や商業施設はとりわけ厳しい。ただし施設の種別によって厳しさに濃淡がある。例えば商業施設においては、物販中心の施設の方がサービス中心の施設よりも相対的に影響は軽微であった。また物販中心の施設の中でも、生活密着型・商住近接型の食品スーパーやドラッグストアなどはむしろ好調であるとすらいえる。