不動産・開発危うい狂乱#2
Photo:Marco Ferrarin/gettyimages

米国のアパレルブランド、アバクロンビー&フィッチが入居し、賃料を巡り訴訟にまで発展した銀座のビルが前回を上回るとみられる額で売却された。いわく付きでも高値で売買されたことに不動産関係者たちは驚いた。特集「不動産・開発 危うい狂乱」(全13回)の#2は、そんな日本で実は海外投資家による不動産購入割合が減っている実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮、臼井真粧美)

アバクロが賃料減額で訴訟
それでも前回を上回る売却額

 東京の銀座6丁目、米国のアパレルブランドであるアバクロンビー&フィッチの銀座店が入居している地上11階建てのビルが2019年、米保険大手プルデンシャル・ファイナンシャル傘下の投資会社から東京建物グループの東京建物不動産投資顧問に売却された。プルデンシャルが坪当たり3億5000万円前後で取得したものが今回は4億4000万円前後、総額200億~300億円で売買されたと推定される。

 不動産市場において、銀座は破格の売買が成立する「別物」エリアといわれており、前回を上回る取引は通常であれば不思議はない。しかし、この物件に限れば、いわく付き。それでも高値で売買されたことに不動産関係者たちは驚いた。

 東京羊羮本舗などから買った土地でカラオケ会社が09年に建てたこのビルを一棟借りしているアバクロの日本法人は、かつて「入居賃料が高過ぎる」と賃料減額訴訟を起こした。

 確かに国内最高クラスの賃料で、銀座の相場の倍となる坪当たり月額約20万円、総額で同約1億2000万円に上った。しかし、それはアバクロ側が申し出たものだった。

 入札で負けたアバクロが、それでもどうしても借りたいと、米国本社の首脳が自家用ジェットで来日して熱望したのだ。結局、16年にビルの所有者が代わるタイミングで2割程度の賃料値下げがかなったとみられ、アバクロは訴えを取り下げた。

 アバクロは旗艦店の閉鎖が続いている。銀座店の定期借家契約期間は23年あたりまでとすれば、その後は閉店を織り込む必要がある。エレベーターの配置などからも一棟借り店舗を前提としたビルであり、次も一棟借りする小売りの入居が理想ではあるが、所有者がこれまでと同じレベルの賃料を確保するのは難しいと銀座に詳しい業界関係者はみている。高値に見合う賃料収入を得られるという当てがないとしたら、楽観的にはなれないはずだ。