携帯3社写真:つのだよしお/アフロ、ソフトバンク提供、KDDI提供

NTTドコモが主導した携帯電話の値下げは、ソフトバンクとKDDIの追随で、大手3キャリアの横並びとなった。この一方で、窮地に陥るのが新興勢力の楽天と格安スマホを扱う仮想移動体通信事業者(MVNO)だ。大手3社の寡占化が強まることになりそうだ。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

“草刈り場”だったドコモ
12年ぶり契約流出に歯止め

「他社への契約の流出が減ってきた」。ドコモの幹部は、携帯電話番号を変えずに他の携帯会社に乗り換える「番号持ち運び制度(MNP)」の結果に自信を示している。

 これまで若者ユーザーを中心に、ソフトバンクやKDDIへの契約流出が続いてきたドコモ。米アップルのiPhoneの販売の遅れなどを要因として、実に09年1月から20年11月まで143カ月連続で他社への流出が流入を上回る「転出超過」が続いていたが、同年12月の集計で、約12年ぶりに転入が転出を上回り、MNPがプラスに転じた。

 ドコモは20年12月3日に携帯電話の新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表。データ容量20ギガバイト(GB)が月額2980円(税別、以下料金表記すべて同じ)で、同じ料金で4Gだけでなく次世代通信規格「5G」に対応するという衝撃のプランを打ち出したことで、他社に乗り換えるドコモユーザーを引き留める効果が生じたのは間違いない。

 これにより、ドコモから顧客を奪い続けてきたソフトバンクとKDDIの2社は一転して流出を防ぐ策を講じなければならなくなった。ソフトバンクは20年12月22日に「ソフトバンク on LINE」を、KDDIが21年1月13日に「povo(ポヴォ)」を発表して、ドコモのアハモに対抗するオンライン専用の料金プランを立ち上げている。

 いずれも3月に提供を開始する予定だ。20年9月の菅義偉首相の就任からわずか半年で、ようやく本格的な携帯値下げが実現することになった。

 もっとも、それと同時に、菅首相と武田良太総務相による激しい値下げ圧力で「官製値下げ」を断行したことで、携帯電話市場では思わぬ副作用が顕在化してきた。