以前から個人情報などのプライバシーを重視する姿勢を強調していたアップルだが、先日、さらにそれを強化する施策を実施した。「App Store」内のすべてのサードパーティーアプリに対して、利用者がダウンロードする前に、そのアプリのプライバシーポリシーを表示することを、アプリ開発者に義務付けたのである。波風立てずに個人情報を取得したいアプリ開発者からすると、厄介な施策だ。アプリ開発者の「App Store離れ」を招く危険性も秘めたこの決定にあえて踏み込んだアップルの狙いは何か? (テクノロジーライター 大谷和利)
タダほど高いものはない
個人情報はビジネスになる
子どもの頃、民放のテレビ番組がなぜタダで見ることができるのか、不思議に思った人はいないだろうか?
その理由はもちろん、各番組のスポンサー企業が、CMの放映料として制作費などをまかなえるだけのお金を支払っているからだ。しかしそのお金は、スポンサー企業の商品やサービスの価格に転嫁されて、結局は消費者が負担しているのである。
ネット上で提供される数多くの無料サービスも同じだ。利便性を提供する代わりに、利用者に「ツケ」が回ってくる仕組みとなっている。そうしたサービスを介して収集される個人情報などのプライバシーをビジネスの糧としているのだ。決して慈善事業ではない。
例えば、ごく一般的な消費者は、グーグルのことを「ネット検索サービスを提供している企業」と認識している。
「Google Docs(Googleドキュメント)」といったWebベースのオフィススイート(オフィス業務に必要なソフトウエアのセット)や、近年はスマートフォンやスマートスピーカーといったハードウエア製品も手がけているため、こうした認識に少し幅が出てきている部分があるかもしれないが、多くの人は「ネット検索の企業」という印象が強いだろう。しかし、その本質は異なる。