コロナ寄付金で早稲田に完敗
慶應大「最強の集金力」に“異変”

 しかし、こうした「拡大策」は今に始まったことではない。ここ30年、慶應大は幾つもの学部を新設してきた。1990年に総合政策学部と環境情報学部を湘南藤沢キャンパス(SFC)に開設。その後も看護医療学部や薬学部と領域を広げ、その結果、学生の数も増えた。SFC開設を境に年間の卒業生は6000人を超え、以来、高い水準の卒業生数を維持する。

 今や慶應大が擁する学問領域の広さは、各大学と比べてみれば一目瞭然だ。特に際立つのが、医療系学部の充実だ。医学部設置を長年の悲願とする早稲田大学はもちろん、医学部の存在感が大きい日本大などと比べても遜色ない。

 加えて付属校の拡大も進めた。92年に湘南藤沢中等部・高等部を、13年には二つ目の小学校となる横浜初等部を開校している。系列校の増強は、将来の三田会を担う「本流」の人材育成につながる。

 伝統的な文系学部から網羅的な医療系学部、さらには大学病院までそろえる「幅広な専門領域」と、小学校から大学に至る「縦長の一貫教育」。この横軸と縦軸の広がりを兼ね備えていることが慶應大の強みの源泉となっているのだ。

 こうした巨大な組織体は、さまざまな好循環を生む。一つは収入だ。慶應大の19年度事業活動収入1695億円のうち大きな割合を占めるのが、学費収入(543億円)と医療収入(653億円)。さらには他大学を圧倒する寄付金収入(99億円)の割合も大きい。

 ただし、そんな慶應大の「最強の集金力」が、早稲田大に敗れるという“異変”も起きている。

 昨春、両大学はコロナ禍で困窮した学生などへの緊急支援を呼び掛けた。慶應大に集まった寄付金は4.9億円(20年12月11日時点)。一方、早稲田大は8.1億円(同10日時点)と大幅に上回る結果となった。