モノのインターネットといってもピンとこない読者もいるかもしれないが、気が付けば街にはIoTがあふれている。例えば、以前はコインパーキングやコインロッカーは現地に行ってみないと空いているかどうかは分からなかったが、今ではインターネット上で利用状況を確認できるところが増えてきた。また、路線バスの走行位置もバスロケーションシステムから確認できる。これらは皆、IoTの活用事例のひとつだ。

 ユニークな例としては、象印マホービンが販売する通信機能を搭載した給湯ポットがある。高齢者が給湯ポットを日常的に利用することに注目し、使用状況を通知する機能を持たせることで、離れて暮らす高齢の家族の安否確認ができる商品として売り出したのだ。モノのインターネットは従来の機能をより便利にするだけでなく、これまでにない新しい付加価値を生み出す可能性を持っているのだ。

JR西日本が導入する
IoTインフラネットワークの狙い

 前置きが長くなった。本連載のテーマである鉄道においても近年、急速にIoTが進みつつある。路線バスと同様に列車の走行位置もアプリで確認できるようになったし、JR山手線では車両ごとの温度や混雑率などを配信するアプリも提供されている。駅のトイレの使用状況を提供する事業者もある。また、車両や地上設備にセンサーを取り付けて、機器の状態を計測しようという試みも広がりつつある。

 そんな中、JR西日本は11月18日、地上設備の状態監視に向けたIoT化を推進するため、「IoTインフラネットワーク」を整備すると発表した。このシステムは鉄道沿線設備に設置するセンサーやカメラと、これらで収集した情報を受信するデータ収集装置からなり、自社通信網と接続するデータ受信装置は線路沿線に約1キロ間隔で設置される。

 2022年度を目標年次とするJR西日本グループ中期経営計画期間中に、東海道線・山陽本線(米原~上郡駅間)、大阪環状線・桜島線、福知山線(尼崎~新三田駅間)、奈良線(京都~木津駅間)に導入予定で、投資額は約11億円を予定している。

 これにより、地上設備の検査業務はどのように変わっていくのか。JR西日本電気部通信課の高月真明課長(高は正しくは「はしごだか」、以下同)に話を伺った。

 そもそも、なぜIoTインフラネットワークの導入が必要なのだろうか。

 高月課長は「労働人口の減少に伴い、現在のようにマンパワーで検査業務を行うのは限界が来る。これをセンサーなどに置き換える必要がある」と説明する。

 首都圏よりも早く人口減少に直面する近畿エリアで事業を展開するJR西日本は、夜間作業の労働環境改善のため終電の繰り上げをいち早く表明するなど、来るべき人口減少社会に備えた動きを進めている。今回のIoTインフラネットワークも鉄道の持続的な運営を実現するための取り組みの一環として位置づけられている。

 鉄道の運行には、レールと車両だけでなく、電車に電気を送る架線や、信号保安装置、通信用ケーブル、踏切など線路に付帯するさまざまな設備が必要だ。こうした設備は「機能維持のため定期的な点検が必要で、3カ月や6カ月おきに設備の電流や電圧を測定し、異常がないか確認している」。

 測定には現地に出向く必要があり、列車が走行する線路脇で作業をする場合は、事故を防ぐために見張り員を付けなくてはならない。また高所の作業では墜落の危険や、高圧電流が流れる箇所では感電の危険性もある。

 そこで設備にセンサーを設置して常時、電流や電圧を測定できるようになれば、現地へ行く必要がなくなり、検査に必要な人員を大幅に削減できるばかりか、労働災害の防止にもつながるというわけだ。