喜びを感じられる道を選んでいく
岸田:ネットでの発信の仕方も、めちゃくちゃ試行錯誤してきたんですよ。チャットサイトも作ったし、アメブロもやったし。インスタもやったけれど、写真映えしないからすぐにやめたり。TikTokも初めてやったときは踊るのが下手すぎて早々にやめました。
ただ、最近ラジオに出演したら、放送作家さんたちから「絶対にラジオ向きだ」とほめてもらえたんです。でも、その時の収録では、絶対にかけたかった曲を、しゃべりすぎてかけられなかったという大失敗があり。その失敗を反省して、「短時間で鉄板トークをしゃべり切る練習をしよう」と自分に課して、今はTikTokで「自分のエッセイのダイジェストを1分間で話す」というチャレンジをしています(岸田奈美さんのTikTokはこちら)。
すると、TikTokで1分まとまった話をする人はあまりいないから結構目立ったみたいで、あまり宣伝していないのに、700万再生とかになっています。コメントを見たら、「話の構成がうまい」って書かれていて、うれしい。
川原:今度はそっちに来たか。天才!
岸田:これも、一回踊ってみて負けた結果としての再チャレンジです。
川原:「できない」から始めて、成功の可能性をどんどん示してくれている。ありがたい。
岸田:だから「今いる場所がつらい」とか「自分の能力が低くてつらい」と感じることにもすごく意味があって、つまり、“求められていない自分”を知れる経験ができているんです。その気づきを活かして、より求められる場所へ行くためのステップだと思えばいい。
川原:本当にそう。そして、移動しながら動いているときに、運よく自分を見いだしてくれる誰かに出会える可能性もある。
そのときに心の準備ができているかも大事ですよね。例えば、僕も「この人にチャンスをあげたい」と思っても、相手がその準備ができているかをすごく慎重に見極めています。だって、思い切れる準備が本人にできていなければ、負担になる可能性もあるから。岸田さんはいつ覚悟ができたんですか?
岸田:常に限界ギリギリだったから、失うものはもうないという気持ちで動いてきた感覚があります。
「大学を出たら、おかんのためのバリアフリーのホテルをつくろう」って思っていたけれど、すぐには無理だと思ったから、起業に参加する道を選んで。
ライターも、会社員しながら副業でやるつもりだったけれど、だんだん両立が難しくなってきて。本を出版するための打ち合わせの場で、「岸田さんは人と違うところがたくさんあって、たくさん傷ついてきたから、人の痛みが分かる。だから、誰も傷つけない文章が書けるんだね」と言ってもらえたことが、会社を辞める転機になりました。
「今まで人に迷惑をかけるだけと思ってきたマイナスのことをプラスに考えてくれる人がいるのなら、安定収入がなくなったとしても、そっちの世界で生きるほうが私は幸せだな」と思えたんです。どっちが幸せに感じられるかで決断したんです。
川原:将来を緻密に計画して、慎重に決断するというより、その時々で「こっちのほうが、自分が喜びそう」と感じられるほうを選んでいく。僕と麻理恵さんも、日本から海外に進出していく過程は全部そうでした。
とにかく動きながら、自分がより活きる場所を探していくことの大切さを、改めて教えていただきました。今日はありがとうございました。落ち着いたらロサンゼルスにも遊びにきてください。
岸田:ぜひぜひ。おかんと弟と一緒にバリアフリー旅で遊びにいきますね。