時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

事業価値を向上させられる経営者かどうかを判断する3つのポイントPhoto: Adobe Stock

内部留保を「攻めの投資」に使っているか?

 2020年10月に財務省の法人企業統計調査にて発表された19年度末の内部留保が475兆161億円となり、過去8年増加し続けています。

 今回、全世界が見舞われたコロナ禍では、特にこの日本の大手企業の内部留保の大きさが功を奏しています。しかし、本当にコンティンジェンシープラン(緊急時対応プラン)として読み込んだ上での内部留保だったのか、というと怪しいところはあります。

 また、不振企業の再生の場数を踏んだ会計士や弁護士と企業評価の話をしていると、「内部留保なんて、すぐになくなりますよ」と指摘されます。企業が「攻めの姿勢」をとり、謙虚な「学び」を続けない限り、事業は必ず低迷状態になり、そのままでは自力で抜け出すことが難しくなります。

 今の日本では、本来、企業にとって必須である、将来の「攻めの投資」のための元手となる内部留保を、必ずしも有効に使えてはいない企業も多々、見受けられます。

 これには、20年以上前のバブル崩壊からの立て直しのために、内部留保の確保に努力してきた習慣がそのまま代々、「前例踏襲」の形で受け継がれてきたままになっているからでしょう。

 そしてそのうちにPLが、偏差値ならぬ「成績表」感覚で受け止められるようになり、経営の実態をある切り口から見るための手段が、達成すべき目的にすり替えられてしまったともいえます。