発売当初から圧倒的な支持を集め、10万部に迫る売れ行きを見せている『直感と理論をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』。戦略デザイナーとして活躍する著者の佐宗邦威氏は「今ない未来をイメージすること」の大切さを語ると同時に、「それを形にできること」の重要性を強調しています。
不確実性が高く、正解のない世の中だからこそ、そうした人材があらゆるジャンルで求められていますが、どうすれば「時代が求める能力」を磨くことができるのか──。今回は「自分の内側にあるイメージ」を「形にする」という技法について、詳しく話を聞いてみました。(取材・構成/イイダテツヤ)
せっかくの「直感」を
「ただの妄想」で終わらせない
──前回の記事では、不確実な時代のときほど「直感」や「感性」が大事になってくるというお話を聴かせていただいたのですが、『直感と論理をつなぐ思考法』では、「ただ、直感や感性を磨きましょう」というだけでは終わっていないですよね。
佐宗邦威(以下、佐宗):そうなんです。たしかに、今の時代「直感」や「感性」で「今ない未来をイメージする」のは大事です。
ただ、それで終わりではなくて、まさに僕が仕事としてやっている部分でもあるんですが、「直感」とか「妄想」を「現実のビジネス」につなげていくところが大事だと思っています。直感でイメージしたものを、ビジネスっていう再現可能で、拡大していけるものへと翻訳していかなければいけない。
ここに橋を架けるというか、本のタイトルにもなっている「直感と論理をつなぐ」というところが必要だと思っています。
──「直感」や「感性」でイメージしたものを「再現可能な拡大ビジネス」に翻訳していくとき、どのあたりがもっともむずかしいんでしょうか?
佐宗:たとえば「誰も見たことがない社会ビジョン」があったとしても、それは誰も見たことがないし、体感したことがない。何もないと、それは「なかったこと」になる。
だからこそ、まずはなんとかして「可視化」する、というのが最初のステップだと思っています。
──たとえば、自動運転の車がビュンビュン走っているような街って、誰も体験したことがないわけですが、それを「可視化」してみるということ?
佐宗:そうですね。コミュニケーションデザインの世界でやろうとしているのが、その未来構想を「見える化」することで、その価値を判断できるようにするという作業だと思います。
もう1つは「翻訳」という観点です。
たとえば、商品とかコンセプトをいくら説明されても、「わかるけど、なんかピンとこない」ということがありますよね。その場合はたいてい、「その人にとってどう役に立つのか」の「翻訳」がうまくいっていないわけです。
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー 大学院大学至善館准教授/京都造形芸術大学創造学習センター客員教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科(Master of Design Methods)修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。BtoC消費財のブランドデザインやハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインプロジェクトが得意領域。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行っており、個人のビジョンを駆動力にした創造の方法論にも詳しい。著書にベストセラーとなった『直感と論理をつなぐ思考法──VISION DRIVEN』などがある。