「自分だけに見えているイメージ」を
「人にわかってもらえる形」に落とし込む
──そういう翻訳がうまくいっていない場合、どうすればいいのでしょうか?
佐宗:それを解決する手段が、いわゆるデザイン思考とか、プロトタイピングですね。形のあるものであれば「プロダクト」をつくってみるし、ユーザー体験だったら「物語」というフォーマットに落とし込んでみる。そうすることで、「その人にとっての価値」がイメージできるように「翻訳」するわけです。
「直感や感性でイメージしたもの」は、それ自体では「価値」として受け取られません。ひょっとしたら、「そんなのはただの妄想でしょ?」と言われかねない。ビジネス文脈の「価値」に翻訳するためには、ある種の「デザイン」が必要になってきます。
ですから、『直感と論理をつなぐ思考法』も、結局は「自分にしか見えていないもの、みんなにはまだ見えていないものを、なんとか形にしてみせる」ための方法をひたすら書いていきました。「内面にあるやりたいこと」とか「イメージ」を可視化してみたときに、「これなら自分にとっても納得できるし、世の中の人にもわかるものになる」っていうところまで解像度を高めていく。そのための方法論を紹介しているわけです。
直感や感性で「今ない、新しいもの」をイメージしていくことは大事ですが、それだけで終わってしまって「可視化して、わかるものにする」というところをやらないと、まったく存在しないのと同じで、何も起こらない。
でも、いったんそれを形にすると、物事が動き始めて、具体的な変化に向けたエネルギーが生まれてくるんですよね。
だからこそ、「目に見えないイメージ」を形にして、翻訳して、他の人にも理解できるようにするという行為がすごく大切になってくる。そして、それには方法論があるから、それが広まっていくことで、世の中にはきっといい変化が起こっていくはずだと信じているんです。