2月19日にJH Audioの新製品発表が行われた。「Contour XO」(コンツアー・エックスオー)、「JH7」、「AFR」だ。国内代理店はアユートで、価格はContour XOが24万9980円、JH7が7万9980円、AFRが16万9980円となる。

 特に注目したいのは、Contour XOとAFRだ。

Contour
AFR

 両者ともカスタムIEMだ。IEMはイン・イヤー・モニターの略で、イヤモニとも呼ばれる。

 Contour XOは、10ドライバー3 ウェイ構成で、クアッド・ハイ・ドライバー、デュアル・ミッド・ドライバー、クアッド・ロー・ドライバーを搭載している。

 特徴は、プロオーディオ業界で数々の賞を受賞したL-Acousticsとの共同開発という点だ。L-Acousticsは、ステージで使うPAで知られるメーカーのようだが、Contour XOはイヤモニとしてそのサウンドシグネチャー(音の個性)と似た音になるように設計されているようだ。

 一方のAFRは、8ドライバー2ウェイ構成で、クアッド・ハイ・ドライバーとクアッド・ロー・ドライバーを搭載している。AFRは「Ambient FR」の略で、Ambientは環境音などの意味である。AFRは独自のベント(ポート・穴)を搭載しているカスタムIEM である。普通使われている完全にクローズなイヤモニだと外の音が入ってこないのだが、AFRではそのベントの働きにより演奏や観客の声などをマイクを使わずにモニタリングできるというものだ。WestoneのAM Proシリーズに似たものと言えるだろう。

イヤモニの神とも呼ばれる、ジェリー・ハービー

 この両者はジェリー・ハービーらしい新製品だといえる。

ジェリー・ハービー氏

 「イヤモニの神」とも呼ばれるジェリー・ハービーは、元々はミュージシャンとツアーを回りライブサウンドミキシングをするサウンドエンジニアだった。その大きな転機は1995年のことだった。ジェリーがヴァン・ヘイレンのライブサウンドの担当をしていた時に当時はまだ未成熟だったIEMの改良を依頼されたのだ。轟音のステージ上のミュージシャンは自分たちの演奏を客観的にモニターするのがなかなかむずかしく、スピーカーに頼る方式では限界があったのでイヤホンを応用したイヤモニに可能性が見出されていたのだ。

 そして、ジェリーハービーはWestoneの「音のゴッドファーザー」であるカートライト兄弟(カール・カートライトとクリス・カートライト)と共同で、バランスド・アーマチュアドライバーを応用してクローズドシェルと組み合わせた現在のイヤモニの基礎を作った。カートライト兄弟もまたミュージシャンでもあり、彼ら自身もイヤモニの将来を模索していたのだ。

 この時のモデルは、のちにジェリーが、Ultimate Earsという会社を起こして「UE5」という名称で一般にも売り出されることになる。やがて彼はUltimate Earsで、「Triple.fi 10 pro」(日本では通称"テンプロ"と呼ばれる)という画期的な高性能イヤホンを設計して今のハイエンドイヤホンにつながっていくが、会社内での争いにより彼自身が起こした会社を去ることになる。

 それはまるで自分自身が設立したアップルを追われたスティーブジョブズを思い起こさせる。そして再び彼自身が起こした会社がJH Audioである。

Westonのカートライト兄弟

 このようにジェリーハービーはミュージシャンとともに歩んできたエンジニアであり、その彼が開発したContour XOとAFRもまたミュージシャンのためのイヤホンと言える。そしてもちろん、そうした世界を味わってみたいという一般ユーザーにもまた興味のある製品となるだろう。