写真:伊勢丹新宿本店
Photo by Satoru Okada

百貨店不振の原因は、顧客の真のニーズを把握できず、アパレル業界に依存した販売モデルから脱却できないままでいることが原因だ。過去の失敗を踏まえ、今からでもプライベートブランド商品の開発に乗り出すべきである。(オチマーケティングオフィス代表 生地雅之)

「百貨店でスーツが売れない」はニュースか?
EC、量販店に顧客が流れたわけではない

 クールビズ、オフィスカジュアルの普及が従来進み、「スーツが売れない」と言われて相当の年月がたちます。新型コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークが進み、ますますピンチに陥っていることは、言うまでもありません。

「洋服の青山」の青山商事、コナカ、はるやまホールディングス(HD)、AOKIHDの、ロードサイドスーツ店4社とも最新の決算で最終赤字となり、売り場の大幅な削減を迫られていることからも明らかです。

 一方でメディアでは、百貨店のスーツの売り上げが不振だと指摘するケースが後を絶ちません。朝日新聞は2月27日付朝刊で「紳士服売り場 スーッと新風 百貨店不振… 化粧品コーナー・靴磨き」との見出しの記事を掲載。そごう横浜店がスーツ売り場に男性向け化粧品の売り場を設けたり、高島屋が日本橋店と新宿店で曜日限定で靴磨きコーナーを設けたことを伝えています。

 しかし、百貨店の紳士服が売れない、ということが果たしてそれほどのニュースなのでしょうか。

 そもそも百貨店では、「紳士服、紳士用品」はメインの商品ではありません。百貨店全体の売上高に占める割合は6~7%であり、「メンズ館」がある伊勢丹新宿本店でさえ、15%強です。「婦人服」と「食料品」がそれぞれ3割弱、化粧品などの「雑貨」が2割程度となっています。

 しかも、その「紳士服、紳士用品」の中でのスーツを含む「重衣料」と呼ばれる洋服は3分の1にもなりません。要するにスーツの売り上げは、スーツに合わせて着るコートやワイシャツ、ネクタイを含めても、百貨店の売り上げ全体の2%程度だということなのです。

 つまり、日本でスーツを買ってきた人の大半は、青山やコナカなど郊外ロードサイド店を利用してきたことがわかります。もちろん、彼らロードサイド店が大ピンチに陥っていることは間違いありません。

 では、従来、百貨店でスーツを買ってきた人たちが、郊外店やインターネット通販(EC)に流出してしまったのかというと、そうでもありません。一般的に百貨店でスーツを買う顧客層の人々は、可処分所得が減少したとしても、生活レベルを落とすことを避けようとします。

 例えば、従来10万円のスーツを年間2着購入していた人であれば、それを年間1着にするか、もう1着をアウトレットモールで売っている型落ち商品で我慢して、30~50%オフで買うでしょう。百貨店のスーツの価格は7万円台が平均ですが、百貨店で買えないからロードサイド店へ、というケースは、非常にまれだと思います。

 スーツや紳士服に限らず、百貨店のお客様がECや、駅前のルミネやパルコのようなファッションビルに流出しているといった見方がありますが、私はそうは思いません。