「なぜ、どのようにSDGsに取り組んでいるのか」

「持続可能な育成プロジェクト」の活動は、学校と企業を結びつけて、SDGsへの理解を社会全体に深めていくことだ。企業に対して、生徒に対して、佐々木さんがいま望むこと、そして、「持続可能な育成プロジェクト」の今後のあり方は――

佐々木 SDGsには「2030アジェンダ*12 」という指針があり、それには“誰一人取り残さない”といったメッセージが記されています。企業も生徒も、SDGsの17のゴールと169のターゲットを知って覚えるだけではなく、この考えを理解したうえで活動に臨んでいただきたいです。

SDGsについて、東北の高校生たちが知って、考え、動いたことダイバーシティ&インクルージョンマガジン「オリイジン2020」(2020年3月発売)の巻頭特集では、 多様性(ダイバーシティ)とSDGsの関係性を解説している

 コロナ禍で生徒も多くの我慢をしていると思いますが、社会人になると 「やりたいこと」と「できること」のギャップが大きくなります。若い人には、「できないこと」だと簡単に諦めるのではなく、どうすれば「やりたいこと」に近づけるのかを考えてほしいです。「やりたいこと」への遠回りに見えることも決して無駄にはなりません。そして、SDGsを意識した行動では、難しいことや規模の大きいことを目指すのではなく、継続できることに重点を置くと良いと思います。

「持続可能な育成プロジェクト」に参画いただく企業さんには、生徒に難しい概念(自社の経営理念など)を語るのではなく、一企業の立場として、「なぜ、どのようにSDGsに取り組んでいるのか」をストレートに伝えていただくようにしています。また、(学校や生徒との)一度きりの付き合いではなく、関係性の持続をお願いしています。学校の先生方とともに生徒と関わりながら、自社のサービスやSDGsへの取り組みについての新たな発見があればいいですね。「売り上げ」「客数」「昨対」といった「見える資産」も大切ですが、「風土」「スキル」「人脈」といった「見えない資産」を大切にしつつ、SDGsを通じた生徒とのコラボレーションで企業の強みが増すことを願っています。

 当然、企業と学校には、物事を進めていくうえでのスピードや価値観の違いがあります。それを考慮しながら授業の内容を一緒に練っていけば、生徒への有意義な学習指導ができ、継続的な付き合いも実現していくでしょう。

*12 「2030アジェンダ」は、ミレニアム開発目標(MDGs)が達成できなかった事業に取り組む一方で、三つの側面、すなわち経済、社会および環境における持続可能な開発をバランスの取れた、統合された方法で達成することを目指す。(国際連合広報センター[2030アジェンダ]より)