
日本企業で相次ぐのが自社株買いの発表だ。PBR改善などのプレッシャーがかかる中、手っ取り早い株主還元策として自社株買いラッシュが続いている。そこで注目したいのが、自社株買い期待に着目した投資戦略。特集『反撃の日本株! 新時代の最強株&投資術』の#6では、自社株買いが期待できる31銘柄のリストを大公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
加速する自社株買いが
投資戦略の狙い目に
東京証券取引所による「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」企業へのプレッシャーや持ち合い株の解消のため、かねてラッシュに沸いているのが、日本企業の自社株買いだ。連日のように自社株買い実施のニュースが発表され、その規模も拡大。いまや、数千億、時には1兆円を超える自社株買い枠が発表されることも珍しくない。
象徴的なのが、昨年12月にホンダが発表した1兆1000億円もの巨額の自社株買いだ。翌日に株価が約12%急騰するなど、株式市場に大きなインパクトを与えた。ホンダは、日産自動車との経営統合協議入りにより機動的な自社株買いに制約が生じることから、当面の自社株取得枠を一度に設定したものと説明。同時に、日産との経営統合を不安視する株主に対し、財務基盤の強さを強調する狙いもあった。
もちろん、大規模な自社株買いを行うのはホンダだけではない。
昨年はトヨタ自動車が、一つの取得枠としては年間でトップとなる1兆2000億円もの自社株買い枠を設定しているほか、リクルートホールディングスが6000億円、三菱商事も5000億円の自社株買い枠の設定を公表した。さらに、株式市場の評価はいまひとつだったものの、今年に入りセブン&アイ・ホールディングスが、2030年度までに総額2兆円もの自社株買いを行うことを新社長就任と併せて発表している。
アイ・エヌ情報センターの資料によると、24年の企業の自社株買い枠は前年比約90%増となる17兆9983億円へと爆増。もちろん、これは過去最高の水準だ。背景にある企業のガバナンス改革は依然ホットなテーマであり、高水準の自社株買いはしばらく続くとみられる。
そうなると、当然目を付けたいのが、自社株買い期待に注目した投資戦略だ。
智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジストは、「トランプ関税などのリスクにより日本株全体の成長ストーリーが描きづらい中、企業の自社株買いが株価を下支えしている面があり、自社株買いのポテンシャルに着目した投資戦略は一つの有効な手法だ」と解説する。
では、具体的にどんな銘柄に着目すればいいのか。今回、大川氏の協力の下、ダイヤモンド編集部では「自社株買いが期待できる」31銘柄のリストを作成した。
具体的には、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、自己資本比率が母集団内上位25%(閾値70%)で、過去10年間の自己資本比率標準偏差が下位25%(閾値2.5%)の銘柄を抽出した。自社株買いは基本的に還元余力のある企業が行うため、まずは自己資本比率が高い企業を選別。さらに、自己資本比率の変動が少ない、すなわち稼いだ利益を剰余金としてため込まず株主還元によって吐き出す傾向が強い企業をあぶり出すために、標準偏差を条件に加味した。
さらに、12カ月先予想純利益成長率が10%以上という条件も加えた。高い利益増加が見込まれれば、それだけ今後の自社株買いにつながりやすい。
三つの条件の中でも、自己資本比率の標準偏差は個人投資家ではなかなか取得しづらいところ。果たして、銘柄リストに登場したのはどんな企業か。早速次ページで、個人投資家が注目したい自社株買いのポテンシャルが高いといえる銘柄リストを公開していこう。