これからの日本のエネルギー政策は
どうするべきか?

――福島第一原発で発生した放射性物質を含む汚染水(以下、汚染水)を浄化設備で処理した後の水(以下、処理水)には、トリチウムなどの放射性物質が残った状態で敷地内のタンクにためられています。これがもうすぐ満杯になるといわれています(予定では2022年の夏だったが実際はもう少し延びる見通し)。

 これは大問題。海外の原子力発電では海洋に流すことは一般的に行われているが、東京電力は関係者の理解なしに福島の海には流さないと約束した。

 1カ月半ほど前に、東京電力の新社長、小早川智明氏と話したとき、汚染水の海洋放棄について問われた。そこで、浄化設備で処理したあとの水は海洋に流すしかないが、これまで東京電力は福島の地元でいろいろと嘘をついてきたので、まずはこれを正す必要があると言った。たとえば、原子炉の中の半ば溶けた核燃料を取り出してほかの地域へ持っていくと言っているが、実際は持っていけるところなどない。だからチェルノブイリのようにコンクリートで埋め立てる。さらに、放射性廃棄物などもほかの地域へ持っていくと言うが、引き取るところなどない。だからこれも確実に地中に埋める。そういうことを地元の人たちに正直に話す。信用を得て、汚染水の処理を行うべきだ。このように伝えた。

 今後、福島の活性化をどうすべきかも本当に大きな問題だ。福島第一原発をこの地に誘致したのは、福島出身の当時の東電の社長、木川田一隆氏。福島を活性化させたいが、なかなか企業が来てくれない。そこで原子力発電所を建設して活性化しようとしたが、このような事故が起きてしまった。

――多発する自然災害、福島第一原子力発電所事故、そして昨今の「京都議定書」や「パリ協定」といった気候変動問題に関する国際的な取り組みや、再生可能エネルギーに関する技術の進歩が相まって、いよいよ日本はこれまでのエネルギー政策を根本的に見直す段階に来ています。

 そう。2015年にパリ協定が結ばれた。世界の平均気温が3度以上上昇したら人類は生きてはいけないかもしれない。そこで先進国が集まって、世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑えようというもの。

 そのため2019年、欧州連合(EU)は2050年までにCO2を実質ゼロにするという目標を立てた。CO2があると気温が上がるからね。しかし、なんとトランプ前大統領はパリ協定から離脱した。でも今年バイデン氏が大統領となり、パリ協定に復帰した。そして日本では菅さん(菅義偉首相)が、2050年にCO2の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすると宣言した。

 そのためにまずは2030年の電源構成をどうするか?石炭と石油が今は40%ぐらいだから、これを30%以下に下げないといけない。そして再生可能エネルギーは今は20%以下だがこれをできれば40%ぐらいに上げる。

 再生可能エネルギーについて、一番リアリティーのあることを言っているのが、小泉さん(小泉純一郎元首相)。彼は首相をしていた頃は原発推進派だったが、日立や三菱重工などからの依頼で2013年にフィンランドの放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」(フィンランド語で「洞窟」を意味する)を視察したところ、原子力発電の使用済み核燃料を無害化するのに10万年かかると知り、衝撃を受けたという。それ以降、脱原発を強く主張するようになった。

 彼が言っているのは、太陽光発電は今はかつての10分の1以下の発電コストになり、風力発電もだいぶ安くなったということ。そして、太陽光発電や風力発電はうまく活用さえすれば、地方創生にもつながると。

 しかし、こうした新しい時代の日本のエネルギー政策を引っ張っていけるような人物はいるのか?このあたりについて今後また話したいと思う。