1億総リストラ#5Photo by Masataka Tuchimoto

コロナ禍の巣ごもり需要を取り込んで業績絶好調のソニーだが、エレキ部門の一部でひそかに早期退職者を募集した。「黒字リストラ」である。そのやり口はとってもドライ。退職勧奨はある日、突然やって来る。特集『1億総リストラ』(全14回)の#5は、その実態を当事者が明かす。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

ある日ビデオ会議で
早期退職募集を告げられた

 2020年10月14日、ソニーエンジニアリング(SEG)に勤めるXさんは、リモートワークのため自宅のパソコンでビデオ会議ツールのMicrosoft Teamsを開き、社内会議が始まるのを待っていた。

 SEGはソニーのエレキ事業を束ねるソニーエレクトロニクス(21年4月からソニーに名称変更)の設計子会社で、社員数は557人。テレビ、カメラ、イヤホン、モバイル、メディカルなど担当する技術領域は幅広い。SEGの仕事量は、ソニー全体のエレキ事業の業務量と連動している。

 この日のビデオ会議に関して、会社からは事前の案内で「今後のSEGについての重大な発表がある」とだけ伝えられていた。ビデオ会議がスタートすると、人事担当者が「早期転進支援の実施について」と題した資料を画面にアップし、SEGの置かれた背景を話し始めた。

 Xさんは驚きながらも「やはり来たか」と思った。こうなる伏線はあった。