製薬最大手の武田薬品工業は2020年下期、国内の営業部隊であるMR(医薬情報担当者)を中心に希望退職者を募った。過去のリストラでは、実施していることを社外に明かさず、当事者たちから非難ごうごう。悪行のごとく語られてきたが、今回はやり口を新たにした。特集『1億総リストラ』(全14回)の#7は、武田薬品のリストラの内情と再就職事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
コロナ禍で先頭切ってリストラ
今回はやり口を新たにした
国内製薬最大手の武田薬品工業は2020年8月、希望退職者の募集を発表した。主な対象は国内営業部隊のMR(医薬情報担当者)で、30歳以上、勤続3年以上。応募者は同年11月末に退職し、300~500人ほどが応じたとみられる。
プログラム名は「フューチャー・キャリア・プログラム(FCP)」。国内ビジネス部門を注力領域に見合った組織体制にするタイミングで、自らの生涯設計に基づいて転進を希望する社員を支援するというものだ。製薬業界は人材の流動性が高いとはいえ、コロナ禍で先頭を切ったリストラに「良くも悪くも、さすがリーディングカンパニー」と、業界に衝撃が走った。
武田薬品といえば旧湘南研究所(現湘南ヘルスイノベーションパーク)で研究員を対象に行った16~17年のリストラ方法(詳細は後述)が「巧妙過ぎた」として、業界で半ば伝説化している。
そんな武田薬品は今回、リストラのやり口を新たにした。