コロナ禍が最後の一押しとなり、年功序列制度の崩壊に拍車が掛かった。日本の大手企業が一気に、仕事に人を配置する「ジョブ型」雇用を本格的に導入し始めたのだ。もし日本でジョブ型が定着すれば、これまでの出世の常識は180度変わる。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#2では、今年度よりジョブ型を導入した富士通の最新事例も交えて、日本独自のジョブ型のメカニズムを徹底解説する。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)
まさに今!激変する出世の力学
待ち受ける「窓際族」への落とし穴
コロナ禍をきっかけに、働き方の選択肢は拡大している。「時間や場所にとらわれない」という個人の変化が着目されがちだが、実はそれだけではない。ずっと当たり前とされてきた“会社の雇用ルール”そのものが変わろうとしているのだ。
コロナ禍前から、日本企業の多くが長い月日をかけて、長期雇用や年功序列などの旧日本型ルールを取り払い、仕事内容やスキルで給与を決める「ジョブ型」雇用への移行を試みてきた。
ジョブ型雇用とは、仕事内容に合わせて人材を採用していく方式のこと。そして、ジョブ型雇用の対になる考え方が従来型ともいえる「メンバーシップ型」雇用だ。
ジョブ型とメンバーシップ型の違いは、簡単に言えば、「仕事内容」に値段を付けるか、「人」に値段を付けるかである。
かつて、多くの日本企業ではメンバーシップ型を採用し、人に値段を付けるのが普通だった。新卒一括採用で総合職として雇用し、転勤や異動、ジョブローテーションを繰り返す。そうすることで会社を支える人材として、長期でゼネラリストを育成する。個々が複数の能力を持っていることが価値であり、人材を柔軟に配置できることも良い点とされていた。高度経済成長の時代にはぴったりの制度だったのだ。
ところが、バブル経済が崩壊すると状況は一変する。経営難に陥った日本企業は人件費の圧縮を進めた。大企業であっても成長分野が見つからなければ、大量の従業員を社内で動かす先の部署がない。メンバーシップ型の良いところが封じられてしまったのだ。
そこで2000年代半ばに、多くの企業がいったんはジョブ型の導入を試みるが、失敗に終わってしまう。想像以上に年功序列が定着していたからだ。
それがなんと、コロナ禍を契機に、再びジョブ型への移行が一気に加速し始めたのだ。
つまり、まさに今、高度成長期以来なかなか変わることのなかった日本の会社のルールが壊れ、新しい出世のメカニズムが出来上がろうとしているわけだ。
この流れにうまく乗ることができれば、自分自身の市場価値が高まり、転職や出世も思いのままになるだろう。しかし、少しでも乗り遅れると、途端に窓際族へ真っ逆さま。抜け出せない落とし穴にはまる危険がある。
ビジネスパーソンであるからには、日本企業がついに本格導入するジョブ型雇用について学び、これからの出世のメカニズムを知ることは必須なのだ。
失敗の連続だった日本の「ジョブ型」が
コロナ禍で再燃した本当の理由
では、一体なぜコロナ禍でジョブ型への移行に拍車が掛かったのか? 理由は大きく二つある。