いたずらに規模を追わないという言葉は、日本の大手電機メーカーの経営者からもよく語られることであるが、日本の大手企業の場合、垂直統合的な開発組織を自前で構築した結果、相対的に組織の規模が大きく、小さい事業の規模では自社の固定費をカバーできるだけの利益を確保することが難しい。
パナソニックもオンキョーも
規模の大きさが経営を苦しめている
経営状況が苦しいパナソニックも、個々のビジネスや製品を見るとユニークで将来性を感じさせるものが多く見受けられる。かつて「マネシタ電器」とか「二番手商法」と呼ばれていた同社を考えると、今日のパナソニックの方が先進的で野心的な新製品が多く見られる。しかしそのどれもが、28万人の従業員、8兆円の売り上げの規模の総合電機メーカーの規模感という意味では、物足りなさを感じる。
同じ大阪企業のオンキヨーも、規模感が経営を苦しめていると言える。オンキヨーはオーディオ専業メーカーであり、総合メーカーより規模は小さいものの、パイオニアのホームエンタテインメント事業も吸収し、オーディオ専業メーカーとしては企業の規模が大きい。その規模感に見合う売り上げを求めようとすると、必然的に製品ラインナップが膨らみ、自社製品間での競合も起き、収益性は悪くなる。
日本はまだまだ終身雇用が雇用形態のベースにあるので、なかなかドラスティックに組織の規模を変えることはできない。また、日本にメーカーというエンジニア集団が残ることにも意味があるだろう。日本企業がリストラや倒産によって、日本のエンジニアの雇用が継続できなくなり、ちりぢりに世界中に散らばってしまうと、日本の雇用が守れないだけでなく、日本の技術蓄積が弱くなる。
これまで筆者が当連載において、「日本のダメな経営者の下で雇用が守られないのであれば、外資の優れた経営者の下で日本の雇用を守る方がマシだ」と述べてきたのは、そうした理由からである。
かつて日本の総合電機メーカーは、いずれも家電部門を持ち、1990年代頃までは日本国内にはおよそ10ブランドほどの家電ブランドが存在していた。これだけ多くのブランドが同じ家電製品でしのぎを削った結果、日本市場の消費者は非常に目の肥えた感度の高いユーザーに成長し、ダイソンなどの多くの海外家電メーカーは日本を格好のテストマーケティングの市場として、自社製品の価値向上に努めている。