(5)従来型の資本主義への疑問

 株主の利益を第一とする「株主資本主義」への疑念が、年々強まっています。企業や株主のみならず、従業員、顧客、取引先、地域といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきという考え方が、コロナ禍で苦しんだ世界各地で、より市民権を得てきました。

 したがって企業には、従業員に対するもっと大きな責任があるという考え方が、企業の行動を変え始めているのです。

(6)人種差別などへの意識の高まり

 リストラや人員整理が行われる際に、特定の民族や国籍の人、特定の地域出身の人ばかりが選ばれているというような評判が立ってしまった場合、企業の受けるダメージは計り知れません。人々は差別に敏感になっており、また、近年の#Me Too運動やBlack Lives Matterムーブメントを見るまでもなく、一人が上げた声から大きなうねりになることも少なくありません。企業はさまざまな側面で、自社のブランドを失墜させかねないリスクを減らしたいと考えています。

(7)ビジネスとしてのアウトスキリング

 企業のデジタルシフト、リモートワークによる学習時間の増加などを背景に、欧米ではリスキリングビジネスが活況を呈しています。特に、オンライン学習を提供するプラットフォームには、投資家から巨額の資金が流れ込み、IPOなどを視野に入れて生き残りをかけたサービス競争が始まっています。

 アウトスキリングに際しても、リスキリングのために開発されたウェブサービスやプラットフォームはほぼそのまま活用できるので、従来リスキリングだけを視野に入れていたサービス事業者は、簡単にアウトスキリング事業をも展開できるのです。

アウトスキリングに注目すべき理由

 ここまで紹介してきたように、上記のような社会変化を背景に、解雇や人員整理に際して、従来の金銭的解決やアウトプレースメントに変わるサービスとして、アウトスキリングへの注目が高まっています。しかも辞めさせざるを得ない従業員とも良好な関係性を維持し続け、企業ブランドを毀損せず、残る従業員の士気を低下させることのない手段である点で、非常に魅力的です。