やがて、Z世代の「無力感」が社会のガソリンになる

 マジョリティとマイノリティ、強者と弱者、健常者と障がい者、高齢者と若者……。さまざまな「分断」が叫ばれるいまの時代を、澤田さんはどう捉えているのだろうか。

澤田 たとえば、「10代の人口は、日本の総人口の10%」という数字があります。つまり、若者そのものが数の上ではマイノリティなんですよね。だから、若者の意見は通りにくいし、いま、彼ら彼女たちが無力感を覚えている理由のひとつには、「(自分たちが)社会におけるマイノリティ」という意識があるのだと思います。

 先日、僕が尊敬する先輩と対談する機会をいただいたんですけど、その先輩が僕のやっている活動を見て、「辺境という言い方は澤田くんに対して失礼だけれど、辺境から必ず『未来』は生まれるんだなと再認識した」って言ってもらったんですね。それが、僕はすごくうれしくて。

 いつの時代も、若者というマイノリティの描く未来が新しい未来につながっていくわけで、Z世代をはじめとした若者たちの価値観が未来のスタンダードになっていくと思います。

 人類の長い歴史を見ても、「マイノリティ」が永遠にマイノリティであり続けたことはほとんどありません。たとえば、奴隷というかつてのマイノリティは解放されましたし、差別はゼロではないものの、米国社会におけるマイノリティの存在もゆるやかにフラットになりつつあります。女性や障がい者を取り巻く環境も、日本ではまだまだ課題だらけですが改善へと向かっています。

 マイノリティは、「永遠のマイノリティ」ではなく、「明日のマジョリティ」だし、「今日のマジョリティ」は「明日のマイノリティ」かもしれない。

 Z世代について言えば、100歳くらいまで生きられると仮定して、人生あと70、80年あるわけで、社会を自分たちにとっての良い場所にする時間はたっぷりあります。(Z世代は)生まれてから成人するまで経済成長を一度も体験せず、政治の腐敗や企業の不祥事をたくさん見てきました。日本の製品が競争力を失い、中国製や韓国製、東南アジア製にお株を奪われるのを目の当たりにして…もうピンチだらけですよね。

 いまはまだ、昭和後期に積み上げられた財産が残っているので、日本という国は壊滅的にはなっていないけれど、本当のピンチはこれから始まります。

 そして、いよいよというときに、Z世代の「溜まりに溜まったエネルギー」が社会の力になるはずです。いま、少なからぬ大人たちがZ世代の価値観に頼り始めているのはその前触れでしょう。

* 「Z世代」は、一般的に、1990年代後半以降に生まれた者を指す。多くの者が、IT環境の整った中で育ち、パソコンやスマートフォンへの知見も多く、情報リテラシーが高い傾向にある。