「ランドセルを作り始めたのは20年ほど前だったと思います。その後、弊社製品の愛用者だった方々から、『このランドセルかわいいですね』『サイズ的には大人でも背負えますよね』といったご意見を頂いたので、そこから大人用のランドセルも展開するようになりました。ただ、大人用、子ども用で大きな違いがあるわけではなく、基本的にはストラップの長さを調整しているだけなんです。弊社のランドセルの売りのひとつは、子ども用のランドセルなのに大人でも背負ってみたいと思わせる点。デザインが洗練されていていること、長年使い込むことで牛革の味わいが出ることが特徴です」

 もともと世の中の流行に乗って製品を作るのではなく、いいものを作るという職人的スタンスからスタートしていたため、ランドセルブームは不思議な感覚だったという。

「ブームがあったのは知っていましたが、特に大人向けの流行を意識してはいなかったので、『なんでランドセルが大人にはやっているんだろう?』という認識でしたね」

 ヘルツのランドセルカラーはキャメル、チョコ、黒、緑、赤の計5色。よくある子ども向けランドセルのようなフタが総かぶせのデザインではなく、「半被せ」のフタをベルトで留めるタイプ。レトロなフォルムと、あえて表面の処理をしていないという革の質感が、大人が使っても違和感のない風合いを作り出している。

「最大の特徴は丈夫さです。修理やお手入れをしっかりすれば、20年は余裕でお使いいただけるかと……。中学、高校に進級したお子さんがいまだに使い続けていらっしゃるという声も多く頂きます。なかにはお子様が使っていたランドセルのストラップ部分を長くして、今はお母様が使っているという事例もあるくらいの丈夫さです。せっかく選んでもらったなら、自分の道具として長く使っていただきたいと願っています」

 職人たちがこだわって作った一品を長く使い続けるのもカバンの楽しみ方のひとつ。新しいシーズンが始まるこの機会、ランドセルタイプのビジネスカバンを手に取ってみてはどうだろう。