「あなたの職場では、理由もなくスーツや制服を強制されていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「服装や髪型を規定する組織」の問題点について指摘します。
服装や髪型のルールがある組織
服装や髪型に細かな規定があり、守らないと非難の目にさらされる職場も少なくない。
これは一概に非難できることではなく、そこで働く人たちの受け止め方もさまざまだ。気持ちが仕事モードに切り替わり身も引き締まるので、スーツや制服を積極的に着用したいという声もある。むしろ服装が規定されていたり、制服や作業服を貸与されたりする職場の方が、毎日の服装を悩まずに済むのでラクだと考える人もいる。
一方で、服装や髪型について会社からとやかく言われるのを窮屈だと捉える人もいる。
どこまでおおらかにするかは組織によるところが大きいように、服装や髪型の自由度への捉え方も人それぞれなのである。
服装や髪型に対する受容度も組織文化を示す
服装の規定に対する評価は人それぞれだが、とはいえ服装や髪型の規定は社員の主体性の尊重や、企業の価値観や体質を体現しているとも捉えられる。
筆者はかつての勤務先であるNTTデータの人たちと今も仕事をすることが多い。かつてのNTTデータは男性社員は黒髪の短髪にスーツ姿の人ばかりで保守的なイメージが強かった。ところが最近になって活動をともにしている部課長や担当者は、茶髪や金髪にカジュアルウェアである。だいぶ柔らかくなってきたと、筆者は好ましく思っている。
また、筆者が人事部門のアドバイザーをしている日系大手金融機関においても、組織風土改革に対する強い思いを持った人事部門の担当者が数年前にカジュアルウェアの着用を開始した。今では本社勤務者を中心に、部課長もカジュアルウェアが当たり前になるなど、組織の景色が目に見えて変わってきた。
そんな時代にスーツ、ネクタイを強要する規定は、やや時代遅れに感じられてしまうだろう。
なんとなく決まっているルールに疑問を持とう
前述の通り、服装や髪型の規定には合理性もあり、自由勝手にしてよいというものでもない。会社組織なる社会の器で働く以上、服装や髪型にもそれなりの節度が求められる。
接客や窓口業務がある仕事や営業などは、いわば人が組織の「顔」だ。会社のイメージを統一する目的で制服が存在したり、スーツなどの服装規定が合理的であったりする場合もある。安全上の理由で作業服を統一している企業や職場もある。
だが安全上や衛生上の理由、または顧客に与えるイメージを統一したいなど特段の意図がない限りは、服装も髪型も自由でいいはずだ。
自由な服装や髪型は、発想力、集中力、主体性などを育み、各々が行動、思考しやすい自由度を職場にもたらす。個性を示すこともできて、それがコミュニケーションのきっかけにもなる。
理由や狙いもなくスーツやネクタイなどが強制されている場合、それはただの縛りでしかない。