外交トップ会談の激突は予想通り
中国は“裏の交渉ルート”を探る

――バイデン政権になって初めて米中高官が顔を合わせた3月下旬のアラスカでの外交担当トップ会談は、米国のブリンケン国務長官らと楊(ヤン)中国共産党政治局員、王毅(ワンイー)外相が冒頭から激しくやり合う異例の展開でした。

 会談は米中それそれが、議会や共産党などの国内を意識したパフォーマンス的要素の強いものだった。双方ともが一歩も譲らない姿勢を示しながら、相手が何をどこまで考えているかを探り合った。お互いが一番、強硬なことを言ってガチンコしたわけだが、そこは予想されたことだ。

 ただ会談の後、非公開の協議が行われたといわれている。その際、気候変動問題に共同で取り組む作業部会を設置するという議論をして、中国側は設置で合意したと言っている。

 中国側は当初から、作業部会設置という形で気候変動問題だけでなく他の問題を交渉のテーブルにのせて折衝する場を作りたいという思惑だったようだ。

 中国の狙いは、経済問題では米国にトランプ政権時代の制裁関税の引き下げや中国の5Gなどのハイテク電子機器の輸入を認めさせて、その代わり米国の農産物や製造品などの購入をすることにあったかもしれない。

 中国は人権や台湾問題は一切譲らない姿勢だが、米中間にはほかにもいくつかの問題がある。例えば、米国は広州、中国はヒューストンの総領事館をそれぞれ閉鎖したままという問題もあるし、中国は、カナダで2年以上、拘束・監視状態にあるファーウェイの孟晩舟副会長の解放を求めている。

 こうした問題の交渉ルートとして、作業部会を考えていたのかもしれない。

 米国は応じなかったが、バイデン大統領は、大統領選の時から米国の国益に合致することは中国とも協力するという姿勢を示している。だが、まずは中国が人権や台湾、海洋進出の問題で、米国の主張をどこまで受け入れるかを確かめてからでないと、作業部会の設置どころか、本格的な協議に応じないという姿勢を示したのだと思う。

「第一列島線」内の軍事的優位
インドも巻き込んで回復狙う

――米国は、太平洋抑止イニシアチブで何をしようとしているのですか。

 太平洋での軍事バランスは、沖縄を含む南西方面、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線の内側は中国優位になりつつある。

 第一列島線とグアム、サイパンなどの第二列島線の間は日米がまだ優位だが、中国は、中・長距離ミサイルや空母・艦載機の増強を進めていて、建造中とされる4隻目の空母が太平洋に配備されると相当厳しい軍事バランスになる。