人工知能は、人間がペーパーで情報分析すれば数年かかる作業を一瞬でやってしまう。例えばミスター何某が著名なテロリストと接触している可能性のある場所と時間、泊まったホテル、乗った飛行機、借りた車、その時の写真や電話通信の音声記録などを一瞬で割り出してしまう。一見どうでもよい大量のデータ自身が、人工知能のお蔭で非常に価値の高いインテリジェンスを生むのです。宝の山なんです。中国、ロシアには、そもそも『個人情報だから』なんて言う遠慮はないですよ」
楽天が持つ膨大な個人情報が外国の手に渡るとどうなるか。経済安全保障の観点から看過できないリスクがお分かりいただけたと思う。この問題は楽天に限ったことではない。
財務省は省令を変更し、先述した事前届け出免除を受けるために順守することが求められる基準に、「個人情報にアクセスしないこと」を追加することが必要である。
楽天が抱え込んだ
事業リスク
2020年8月、米国のマイク・ポンペイオ国務長官(当時)は「悪意ある攻撃者から市民を守る『クリーンネットワーク』の取り組み」に関する声明を発表した。
(1)中国の“信頼できない通信キャリア”をアメリカの通信ネットワークに接続させないクリーンキャリア
(2)アメリカのアプリストアから中国製などの“信頼できないアプリ”を排除するクリーンストア
(3)ファーウェイなど“信頼できない中国のスマホメーカー”の製品で、アメリカ製アプリを利用できなくさせるクリーンアプリ
(4)アリババ、バイドゥ、テンセントなどの中国企業が、アメリカのクラウドにアクセスするのを防ぐクリーンクラウド(太字は筆者による)
(5)中国と各国のインターネットをつなげる海底ケーブルが、中国共産党の情報収集に使われないようにするクリーンケーブル
上記の五つの方針を示し、中国共産党などの悪意のある攻撃者による攻撃から米国市民のプライバシーと企業の機密情報を守るトランプ政権の包括的なアプローチであるとした。
これは、前述のデジタル安保問題と関連していることは明らかだ。米国では、トランプ政権からバイデン政権に交代したが、クリーンネットワーク構想は取り下げられていない。