楽天とテンセントのプレスリリースの記載内容はともに、三木谷氏による「テスラなどにも投資している一種のベンチャーキャピタルだ」という説明や「純投資」という主張とは、明らかに矛盾する。

 楽天は日本郵政と同様、テンセントに対しても第三者割当増資を使った資本提携を行い、3月31日に第三者割当増資は完了している。

 テンセントと楽天との取り組み内容は、日本郵政と楽天との資本業務提携と同じストラクチャーと判断する。つまり、楽天が主張する純投資には当たらないと筆者は考えている。

日米両政府が
楽天を監視する理由

 米国の外資規制の一つが「外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA)」だ。FIRRMAでは、外資規制の対象をTechnology、Infrastructure、sensitive personal Dataとしており、機微な個人情報が海外へ流出する可能性がある案件は、対米投資委員会(CFIUS)の事前審査の対象になる。楽天が持つ膨大な個人情報が、中国の国家情報法により、テンセントグループを通じて中国共産党に流れるリスクに、米国が重大な関心を持つことは自明だ。

 なぜ、個人情報が移転されることが問題なのか。その理由について、元内閣官房副長官補の兼原信克氏と慶應義塾大学教授の手塚悟氏が「デジタル安保でも欠落する国防意識」という対談(『月刊 正論』6月号)で説明されているので、その一部を転載する。

「データ管理というのは最先端のサイバーセキュリティの話で、この二十年くらい世界中がすごく神経を尖らせています。日本は5Gのようなハードウエアへの対応は早かったが、サイバー攻撃やソフトウエアを使って大量にデータを抜かれるということに関して政府全体の危機意識が薄い。トランプ政権の時、アメリカは中国系動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』の使用を一時止めましたが、なぜTikTokがだめなのか。入力している色んな情報、例えば生年月日、クレジットカードとか、恐らく全部中国のサーバーに抜かれるからです。彼らはそれをスパコンを使ってAIをかけて高度なインテリジェンス情報に加工できる。塵の山からダイヤモンドが生まれるんです。