相続人にDV被害者がいる場合は…?

 では、逆に、相続人の中に生前の被相続人から虐待を受けていた者がいる場合、どうなるであろうか。DV被害者は、平成13(2001)年10月に施行された「DV防止法」(正式名称・配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)によって守られている。

 配偶者から暴行罪・傷害罪に当たるような暴行を受けたことがある、または生命・身体へ害を加えるとの脅迫を受けたことがあり、今後もそのおそれが大きい場合、被害者は裁判所へ申し立てができる。申し立てが通れば、接近禁止命令等の保護命令が発令される。

 また、配偶者によるDV被害者は、区市町村に「住民基本台帳事務におけるDV等支援措置」を申し出て、「DV等支援対象者」となると措置が講じられる(この場合、事実婚も含む)。加害者からの住民基本台帳の閲覧や住民票・戸籍の写しの交付を拒否できるのだ。

 DV被害者が住宅ローンを組んだり、不動産売買の当事者だったりする場合、登記簿から住所が知られる可能性がある。登記事項証明書は、手数料さえ払えば利害関係者なら誰でも取得可能だからだ。しかし、これにも措置が講じられている。住民票上の住所と登記簿上の住所が違っても、住所変更登記は必要ない。

 そのため、相続人の中にDV被害者がいると、相続人探索は困難を極める。探索には時間も、手間も、費用も要する。遺産分割は、相続人全員の合意がないと決着しないからだ。DVは死んだ後までも身内に迷惑をかけてしまう。

 さて、テレビドラマ『私の夫は冷凍庫に眠っている』の最終回も近づいてきた。小説やコミックの読者は結末をご存じだろうが、ここであえてネタバレするのは止めておこう。ドラマも同じ結末なのだろうか。楽しみにしたい。