コミュニケーションと
OJTに大きな課題

 まず、在宅勤務を行うことで引き起こされる最も大きな課題は、新入社員と社内関係者との「コミュニケーション不足」だ。対面コミュニケーションの機会が減り、オンラインに置き換わることで、コミュニケーションの質・量が低下する。

 昨年度の新入社員に聞いた在宅勤務の課題ランキング(図1)を見ても、1位、3位、6位に、それぞれ「同期、先輩社員、上司とのコミュニケーションのとりづらさ」が挙がり、約半数の新入社員がそれを実感していた。また、在宅勤務で新入社員を受け入れた企業の約7割の人事担当者が、これらを課題だと認識していた。

図1.新入社員の在宅勤務の課題ランキング(新入社員から聴取)出所:パーソル総合研究所「新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)」。以下同様
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 では、新入社員が社内の人とのコミュニケーションをとりづらいことは、どのような問題を引き起こすのか。

 新入社員にとって、社内のコミュニケーションは、単に親睦を深め円滑に仕事をするためだけでなく、仕事内容や組織文化・理念を理解し、会社に適応することを促す役割がある。在宅勤務によって、新入社員が会社に適応できない状態が続くと、パフォーマンスを発揮できないばかりか、孤立感からメンタルヘルスの不調や、早期離職といった事態につながる。また、すでに会社に適応できている既存社員は、オンラインで問題を感じないとしても、新入社員は難しさを感じている可能性がある。こうした認識のギャップにも、注意が必要だ。

 とりわけ、ランキングで1位に挙がっている「同期とのコミュニケーションのとりづらさ」は、長年、新卒一括採用を行ってきた日本企業特有の課題と言える。同期は、新人時代を互いに切磋琢磨し、支え合う仲間というだけでなく、後々の社内のキャリアにおいて、なくてはならない人脈になる場合も多い。

 また、先輩社員とのコミュニケーションも、会社内での人間関係や組織文化を理解するために重要だが、在宅勤務では、特に普段の業務で関わらない他部署の先輩社員とは、接点が持てなくなる傾向があった。上司は、新入社員が仕事を覚え、職場に定着するために最も重要な役割を果たさなければならないが、在宅勤務では気軽に相談しづらい、レスポンスがすぐにもらえない、といった課題が生じていた。