
2月に始まる中学受験塾の新年度から早3カ月。塾に真面目に通い、家でも勉強しているのに成績が上がらない……。そんな親子の悩みに応える、短期間で成績アップが期待できる家庭学習法とは?特集『わが子がぐんぐん伸びる!中高一貫校&塾&小学校』の#20では、男女御三家や筑駒、灘など最難関校に3000人以上を合格させてきたカリスマ家庭教師で、中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表、西村則康氏がその方法を直伝する。さらに付録として、西村氏作成の学年別「週間学習スケジュール」と、小4から受験本番までの学習内容と塾のスケジュールが分かる「年間ロードマップ」を一挙掲載する。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
4カ月で偏差値50→60へ爆上げも可能
志望校が2ランク上がる家庭学習法とは?
塾の新学年である2月からゴールデンウイーク明けの5月ぐらいまで続けてきた家庭での学習法が、もし間違ったものであれば、その後の受験勉強にも多大な悪影響を与えるので、この時期は学習法の点検、見直しが急務になります。
誤った学習法の目安として、小4~6まで学年を問わず、塾で行われた月例テストなどで、「3カ月間」にわたって子どもの成績が上がらない状態が続いているならば、それまでと同じ勉強法を続けている限り、永遠に成績が上がることはないという証拠だと思ってよいでしょう。
まず親の方々に知ってほしいのは、成績が上がらないからといって子どもの多くはサボっているわけではなく、むしろ子どもは勉強しなければという強い義務感を持っているということ。ところが、問題が解けなかったり、次から次へとやるべきことを与えられたりすると、「考える」よりも「終わらせる」ための学習、スケジュールを消化することを目標にした勉強に陥ってしまい、逆に成績低迷の原因になってるケースが本当に多いのです。
なので、成績が伸びない際、親は子どもの勉強量を増やすという方向に走るのではなく、学習の仕方をどう工夫するかということを最優先に考えてください。
今から述べる学習法の工夫次第では、例えば子どもの現在の学力が四谷大塚や日能研の偏差値で50前後であれば、今から夏の終わりまでの3~4カ月間で+10ポイント、偏差値60前後ぐらいへ上げることも十分可能です。偏差値+10というと、ハードルが高いように思われるかもしれませんが、テストの点数に置き換えれば各教科で10~15点ずつ、4教科合わせておよそ50点加点できれば到達する数値です。作戦を練って効率的に学習することで達成できる点数なのです。
ただ、子どもが小1~3の低学年で塾通いしている家庭の場合は、まず偏差値やテストの点数に一喜一憂しないことが何よりも大事。とにかく子どもが楽しげに塾に通っていれば万時OKぐらいに考えるべきです。
一方で、小4になると、ちょうどこの5月ぐらいから学習内容が本格的に難しくなり始めます。そうすると、これまで1時間で終わってた塾の宿題が、そんな時間では全く終わらなくなる。結果、親の中には「やる気がないんじゃないの?」という誤った捉え方をされる人が増えてくる時期でもあるんですね。
では小5はどうか。5年生のカリキュラムは、実は中学受験では一番重要です。つまり、入試で出題される内容のメインテーマばかりを扱う。もっと言えば、算数ならば5年生のうちに全単元終わってしまいます。だから毎週毎週、入試に出そうな単元が続くため、どの単元も手を抜けないのです。
まずは続けてはいけない誤った学習法から述べると、子どもの「理解の浅さ」を「繰り返し」で、つまり反復演習の回数でカバーするやり方です。この学習方法を取ってしまうと成績が伸びなくなります。1回解いてできなかったので、2回、3回……1週間で5回解いた、という学習をしている子どもは意外に多いです。結果、先ほど述べたように、勉強に長時間費やしているにもかかわらず、全く成績が上がらないという現象が起きる。

ただし、例外があって、この時期の新4年生だけはそんな間違ったやり方でも成績が上がることが少なからずある。まだ受験に向けた勉強が始まったばっかりで、それほど難しいこともやってないし、1週間にこなす量もそんなに多くないので、「繰り返し」による機械的な丸暗記で乗り切ることが可能になってしまうからです。それほど良い点数ではないけれども、ほどほどのところまではできてしまう。
もちろん、これは間違った成功体験で、5年生になってもこのやり方を続けてしまってつぶれる子どもは多い。また、近年の入試傾向は、難関校だけでなく中堅校でも、ひとひねりを加えた「考えさせる」問題の出来不出来が合否を分けるケースが増えているので要注意です。
「理解が浅い」原因は幾つかあり、まず基礎学力の不足です。例えば、算数のベースである計算力が十分に身に付いておらず、塾での授業中、自分で答えを出すためにゆっくり計算している途中で、講師の解法の説明が始まってしまい、その説明を聞けずに終わってしまうケースなどがそれに当たります。
二つ目は、講師がしゃべってる内容を理解するための前提となる、さらに下のレベルの基礎中の基礎の部分がおろそかになっているケースです。例えば、算数の「売買損益」の問題を苦手とする子どもは想像以上に大勢います。その理由は単純な話で、「定価って何?もうけ?利益?」というように、子どもが問題に出てくる用語の意味をちゃんと知らない、いわば「常識」として知っておくべきことが身に付いていないのです。
当然ながら、塾の授業はそうした設問の前提となる基礎中の基礎的な部分を無視して進んでいきます。では、どうやってこれを身に付けるのかといえば、各家庭の普段の教育に任されてるんですね。だから保護者の方々は、子どもの成績が伸び悩んでいる場合、そういう基礎中の基礎の部分が抜けてないかをチェックする必要があります。
そして、三つ目として、子どもの塾の授業の「聞き方」も非常に大切です。小学校の授業は、ほとんどの子どもが付いていけるぐらいのゆっくりしたスピードですよね。これに対して、塾の授業の方は、基本的にそのクラスの学力上位3分の1ぐらいまでが理解できるスピードと深度で行われます。
なので、どうしても残り3分の2の子どもは、聞き逃すか、理解し切れないうちに授業が先に進むという瞬間が必ず訪れます。子どもがそれにとらわれると、その後の講師の言葉も全て頭に入らず、気付いたときにはもう講師が何を言っているのかさえも分からない状態に陥りがちです。
では、塾の授業において、どういう「聞き方」をするのが正解なのでしょうか。
次ページからは、塾の授業の正しい「聞き方」のほか、効率的、効果的に苦手問題を克服できる「家庭学習法」や、子どもが「伸びる教科」の見つけ方と「教科別学習法」まで、カリスマ家庭教師が指南する。さらに付録として、西村氏作成の学年別の「週間学習スケジュール」と、塾と家庭学習の年間計画を記した「年間ロードマップ」を掲載したので参考にしてほしい。