コミュニケーション不足に次いで課題となるのが、「OJTにおける育成効果の低下」だ。先ほどの在宅勤務の課題ランキングを見ると、4位と5位に、それぞれ「OJTや業務を通じた育成効果の低下」、「研修・業務へのモチベーション低下」が挙がった(図1)。

 在宅勤務では、「見て学ぶ」観察学習ができないため、従来のやり方のままではOJTの効果が低下する。また、上司や同僚が近くにいないため、周囲から承認されている感覚や仲間意識などが薄れ、モチベーションも上がりづらいと考えられる。多くの日本企業では、新人育成がOJTに大きく依存しているという構造があるため、在宅勤務によってOJTがうまく機能しなくなることは、新入社員が育たないことに直結する。

 在宅勤務での新人受け入れにおいては、こうした「コミュニケーション不足」と「OJTにおける育成効果の低下」の2点が重要課題といえるだろう。現在のコロナ禍の状況において、これらの課題を解決し、在宅勤務でも新人育成を成功させるには、どのような対策が有効だろうか。

オンラインでも新入社員が
気兼ねなく話せる環境に

 まず、当然のことではあるが、在宅勤務によって最も課題となる社内の「コミュニケーション不足」を補う対策が効果的だ。

 調査データからも、コミュニケーション支援の重要性が浮かび上がった。驚くべきことに、昨年度、在宅勤務を実施した企業の中には、「コロナ禍によって、新人の成長や定着に良い影響があった」と考える企業も一定数あったが、そのような企業の人事担当者は、上司や同期、先輩社員、経営層との「社内コミュニケーションの機会を増やす」対策を積極的に行っている傾向があった(図2)。特に、経営層や先輩社員についても対策を行っていたかが、分かれ目となったようだ。

 具体的なコミュニケーション支援策としては、新入社員同士や同じ部署、部署横断など、さまざまなメンバーで、オンライン歓迎会や懇親会を実施する、上司や育成担当者との定期的な面談や雑談の時間を設ける、上司や育成担当者以外にも相談できる相手や窓口を設ける、といった施策が考えられる。社内SNSなどのITツールを使って、新入社員が同期や先輩社員に何でも報告・相談できるプラットフォームをつくるといった取り組みも有効だろう。