伴走型から自律型のマネジメントへ
細かい進捗管理は逆効果

 次に、在宅勤務による「OJTにおける育成効果の低下」を避けるにはどうすればいいか、を見ていこう。

 この対策として有効な方法の一つが、上司のマネジメント方法を「伴走型」から「自律型」に転換することだ。

 在宅勤務では、対面に比べ指示が伝わりづらく、新入社員の業務の進捗状況も見えづらい。これまでのように、横目で見ながら細かい指示やアドバイスを出すような、伴走型のマネジメントは難しい。新入社員の課題ランキング(図1)を見ても、「自律的に業務を遂行する必要性」が2位に挙がっており、新入社員が自律的に働かざるを得ない状況が見てとれる。そこで、在宅勤務では、むしろ新入社員が自律的に業務を遂行できることを目指し、上司がそれを支援するようなマネジメントに転換することが有効だと考えられる。

 先ほどの上司の行動に関する分析結果を見ると、在宅勤務では、「上司がビジョンや方向性を示してくれる」新入社員の方が、成長や定着の度合いが良好な傾向があった(図3・図4)。別の分析では、「作業スケジュールを自分で決められる」ことも、新入社員の成長や定着を促していた。一方で、「上司が、仕事がスムーズに進捗するように支援してくれる」ことは、かえって定着にマイナスに働いていた。

 つまり、在宅勤務では、上司は細かく進捗を支援するのではなく、仕事のビジョンや方向性をしっかりと共有し、細かい作業スケジュールは新入社員に任せるようにすることが効果的という結果だ。

 ただし、放置するような状態になってしまうと、気軽に相談しづらい在宅勤務では、新入社員が行き詰まってしまうため、前述のような信頼関係を築き、上司の方から相談したいことはないかと持ちかけ、丁寧にフォローすることが重要だ。また、ITツールを利用して現在の仕事の状況や新入社員のタスクを見える化し、自ら進捗管理ができるようにするといった対策も、新入社員が自律的に働くことを支援することにつながるだろう。

 昨今、若手の労働力不足が深刻化する中で、新入社員の育成と定着は、多くの企業にとって重要課題だ。在宅勤務における新人育成を成功させるために、組織的なコミュニケーション支援や上司のマネジメント方法の工夫といった対策が求められている。