小ロットでも高付加価値を武器にした
ビジネスが可能になった

 彼らは生活のための仕事を維持しながら日々のライフスタイルの充実のために農業に携わるタイプと、いずれ独立することも視野に入れながら農業に取り組むタイプの2種類がいます。後者はやりたいことだけでなく、経営面や技術面、仲間づくりなど、トータルで考えているのが特徴です。

 こういった形で農業に携わることができるようになったのは、インターネットの普及で情報の習得が容易になり、ECによる初期負担の少ない販売ができるようになったことが大きい。つまり、小ロットでも高付加価値を武器にしたビジネスが可能になったのです。

 その要因として、取引先の変化も大きいと思います。例えば、お酒ではマイクロブルワリーやマイクロワイナリー、マイクロディスティラリー(小規模蒸留所)といった小さいからこそ強く個性を打ち出せる工房が作る商品が、その希少性も含めて人気となっています。それらの多くは畑を持ちませんし、一部は都会で工房を展開しています。

 ただそのこだわりの強さ故、望む素材を仕入れるために農家に指定の品種を作ってもらうところもあり、農家との結びつきは強い。こうした交流によって、農家は新たな視点を得てつくり手としてのモチベーションが高まり、栽培品種の幅が広がっています。一気通貫型の6次産業化ではなく、こういったアライアンスも農業に影響を与え始めているのです。

 一方、都心でも農業が身近になっています。レンタル農園が増えており、商業施設の屋上などは以前からすぐに募集が埋まる人気ぶりです。外出自粛中に家庭菜園を始めた方も多いのではないでしょうか。自分で農作物を育て始めると、意識に変化が起こります。家庭菜園で化学肥料を使っているという人はあまり聞いたことがなく、多くが有機肥料や家庭の生ごみを堆肥化して野菜を作っています。

 土に目が行き始め、もともと持っている自然の力で、健康な野菜をどう作ろうかと考えるようになります。虫や病気との闘いもしかり。化学肥料や農薬の便利さやコストを知ると同時に、それを使わない栽培の手間も学ぶことになります。さらに、見た目の美しさにこだわらなければかなりのことができること、傷や虫がついた野菜もおいしいことを発見し、共存する虫を大事にするゆとりも生まれます。