4つ目は「共感価値」だ。「情緒的で」「潜在的な」価値で、おまもりのようなものをいう。評判価値とは対照的に、他人との関係においてではなく、純粋に自分の中で発生する価値である。ボルヴィックはフランスの水なので、フランスの価値観に共感する人は、ボルヴィックを飲むことで精神的充足感を得られるだろう。

 顧客の声に耳を傾け、自分たちの商品の価値を明らかにしていく。これこそ、「価値の定義」で行われるべきことだ。

◇STEP3:価値をつくりだす

 ステップ2の「価値の定義」では、相手にとって何が価値であるのか明らかにした。続くステップ3の「価値をつくりだす」では、その価値を提供するための「機能・品質」「主張」「外観(パッケージ)」を選び、コンセプトをつくっていく。

「価値をつくりだす」の本質は、相手との対話にある。「機能・品質」「主張」「外観(パッケージ)」は、相手にとっての価値を実現するための手段でしかない。それをよく理解した上で、相手との対話を通じて価値をつくりだし、磨き上げていくことが大切だ。

「価値をつくりだし、磨き上げる」ことの大切さを理解するために、著者自身がブログサービスのnoteで人気記事を書こうとしたときのエピソードを紹介しよう。市場の定義は「30代くらいまでの若手ビジネスパーソン」、提供価値は「幅広いビジネスに役立つ基礎体力が身につく」に設定した。

 価値を定義するにあたって行ったのは、30代前半のビジネスパーソンへのインタビューだ。すると、ターゲットは、情報収集のやり方に課題を持っていることが判明した。そこで著者は、「情報・知識のインプット方法」をテーマにしたら広く読まれるのではないかという仮説を立てた。

 さらに、ターゲットは「自分に合った情報収集手段がない」という課題を持っていることもわかった。ビジネス系ニュースアプリのような「上昇志向」を強く感じさせる情報収集ツールは自分には向いていないと感じていたのだ。

 そこで「ノットイコール上昇思考」という価値観を掲げ、「なくてもいいけど、あると人生が豊かになる、そんな知識を集めたマガジン」というコンセプトのnoteを書くことにした。そしてその価値観を伝えるために、カバー画像や挿入画像を工夫し、記事のコンセプトをまとめた文章を何人かに見せて反応を探った。

 こうしてできあがった記事は、2020年11月、noteにおいて「最もスキされた記事」に選ばれた。