ただ、まだそのころは支出額が満足度に等しいと信じ、満足度曲線が踊り場に突入し始めていることにほとんど気づいていません。

 人生は続きます。家を買い、仕事を始め、家族に対する責任を負います。会社で昇進の階段を上り、お金を稼ぐほど、心配事が増えて、より多くの時間とエネルギーが必要とされます。家族との時間は減ります。

 泥棒に入られると失うものも多くなるため、泥棒を心配するようになります。税金も増え、税理士に払う手数料も増えます。地域の慈善活動からは多くの寄付を求められます。リフォームの請求書。インターネットやケーブルテレビ、携帯電話の料金。子どもの幸せな生活にかかるお金。

 ある日、2.5エーカー(およそ11万平方メートル)の木々に囲まれた土地にある、車3台分の車庫と地下の高額なトレーニング設備を備えた大きな家で、心が満たされていない自分に気づき、貧しい大学生のころに公園で散歩するだけで楽しかった時代を懐かしく思います。

 満足度は頭打ちになり、「お金=満足」という公式がもはや成り立たず、むしろお金が自分にマイナスになり始めていることにまだ気づいていません。どんなに多くのものを買っても、満足度曲線は下降するばかりです。

「十分」
満足度曲線の頂点

 このグラフには非常に興味深い点があります。頂点です。

 人生がうまくいく秘訣とは、最大の満足感をもたらす点を見極めることにあるのではないでしょうか?

 満足度曲線の頂点には名称があり、あなたのお金とのかかわり方を根本から変えてくれる土台となるものです。私たちが日々使っているものの、なかなか気づくことができない言葉です。

 その言葉とは「十分」です。

 満足度曲線の頂点で、私たちは十分に満たされます。生存のために十分な必需品。くつろぎや喜びのために十分な楽しいもの。そして少しばかりのぜいたく品です。

 必要なものはすべて手に入れています。重荷になったり、悩みの種になったり、借金で買ったり、一度も使ったことがなかったり、支払いのために身を粉にして働く必要のある余分なものなどいりません。

 十分とは安らぎの場所です。信頼できる場所です。正直でいられ、内省できる場所です。

 お金があなたの人生にもたらすものに感謝し、十分に楽しみつつ、必要でないもの、欲しくないものには決してお金を使わない。自分にとって何が十分なのかがわかったとき、あなたの満足度曲線は方向を変え、上昇に向かいます。あとはそのまま生きるだけです。