テレビなど各種メディアで話題となり、日本人の食生活を変えた90万部超の大人気ベストセラーシリーズ待望の最新刊『医者が教えるダイエット 最強の教科書』が刊行される。20万人を診た糖質制限の名医・牧田善二氏が、最新の医学的エビデンスに基づき、最も効果的なダイエット法をわかりやすく解説するだ。「食欲をガマンしない」「キツい運動はしない」「お酒を飲んでOK」などダイエットの常識が次々と覆される。本稿では、本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

医者が教えるダイエットPhoto: Adobe Stock

いつまでも痩せられない「本当の理由」

 過去に多くの人がダイエットに失敗してきた大きな原因は、そもそも方法論が間違っていたことにあります。

 長い間、「やせるためにはカロリー制限が必要だ」と言われてきました。

 カロリーを制限すれば空腹になり、それを我慢して続けることは難しく、反動で大食いするというケースが多々見られました。

 未だにこの間違った理論に従っている人にとって、やせるのが難しいのは当然の話です。

 一方で、「太るのは糖質を摂り過ぎているからだ」ということを知っていてもやせられない人がたくさんいます。

 そういう人たちは、「太るのはわかっているけれど」という前置きをした上で、こんなふうに言います。

「定食の大盛りご飯を残すのはなんだかもったいない」

「どうしてもランチは麺類や丼物になってしまう」

「新発売のお菓子チェックは楽しくて」

「清涼飲料水を飲むのは大事な気分転換だし」

 ご飯、麺類、お菓子、清涼飲料水……といったものが糖質のかたまりであり、太るとわかっていながら摂ってしまう理由について、そもそもまったく理解していないのです。

痩せられない根本原因は「糖質中毒・糖質依存」

 彼らは、「本気で糖質制限すればやせることができるが、今は意志の弱さのせいでつい大好きな糖質を摂ってしまっている」という認識の上に立っています。

 こういう理解に留まっている限り、まずやせることはできません。

 一時的に糖質を控えて体重を落とすことはできたとしても、すぐにリバウンドします。

 なぜなら、彼らはもっと本質的な理由、すなわち「自分の脳が糖質中毒に冒されている」ことに気づいていないからです。

 日本人でBMIが25を超えれば、医学的には「肥満症」という立派な病気です。

 肥満症という言葉は起きている現象を表現しているわけですが、原因にフォーカスすれば「糖質依存症」と言い換えることができます。

 そして、糖質依存症は脳の病気なのです。

 脳は、私たちの行動のすべてを決定します。どれほど医療が進歩しても脳だけは移植することはできません。あなたに私の脳を移植したら、もはやあなたは存在せず牧田善二になってしまいます。

 このように、その人そのものである脳は、あらゆる指令を出しています。

 たとえば、あなたが右手の親指で本書をめくっているとしたら、それは手がやっているのではなく脳がそうさせています。

 その脳が糖質依存症になっていれば、いくらあなたがやせたいと望んでも、逆の「もっと糖質を摂るように」という強い指令が出されてしまい、あなたはそれに従うしかなくなるわけです。

 やせるのが難しいのは、脳が狂っているから。その脳を治さない限り、糖質依存症は治らず、肥満症も治りません。

糖質中毒の恐怖

 SNS、ゲーム、ギャンブル、仕事、恋愛など行動に依存するのを「行動嗜癖」、アルコール、ニコチン、薬物など物質に依存するのを「物質依存」と言います。

 糖質依存症は物質依存で、薬物の中毒と同じようにやっかいです。

 いやいや、いくらなんでも薬物中毒と肥満を同列には考えられないでしょう」と反論する人もいるでしょう。

 しかし、その認識の甘さがあるから、やせるのは難しいのです。

 行動嗜癖にしろ、物質依存にしろ、依存症は一度なったら抜け出すのは簡単ではありません。

 スティーブ・ジョブズは自分の子どもiPadを持たせなかったと言われていますし、麻薬の売人は自らそれに手を出すことをしません。

 彼らは、中毒になることの怖さをよく知っているからでしょう。

 糖質依存症も同じことです。

 ただ、ご飯やラーメンなど、あまりにも日常的に口にしている食べ物が原因となっているだけに、本人は気づかないのです。

 気づきが遅ければ、それだけ進行します。

 これが薬物依存なら、本人は「明らかにまずいことをやっているがやめられない」という認識があります。

 そして、本気でやめたければ「一切、手を出さない」という方法がとれます。

 しかし、まさか炭水化物が中毒を呼ぶなどとは思いもしないし、たとえ認識できたとしても、まったく口にしない生活は不可能です。

 つまり、糖質依存は、ほかの依存症よりも長い時間をかけて脳を侵食しており、それだけ治すのが難しいとも言えるのです。

(本稿は書籍『医者が教えるダイエット 最強の教科書──20万人を診てわかった医学的に正しいやせ方』から一部を抜粋・編集して掲載しています)