真正面からお客様にお願いする

 それでも、紹介をいただけなければ営業マンが生きていけないのも、嘘偽りのない現実です。

 だから、僕は、その現実をお伝えして、「ご紹介をいただきたい」と率直にお願いをしていました。紹介を依頼されたお客様の気持ちに「配慮」しながらも、余計な「遠慮」はしないようにしていたのです。

 図々しいと言えばそのとおりですが、僕の心の底からの願いなのですから、それを「自己開示」することを躊躇する理由もありません。それに、きちんと相手に対する「配慮」を示すことができれば、「心からのお願い」を失礼に思う人はいません。

 僕は、だいたいこんなふうに、「紹介」のお願いをしていました。

「僕は、◯◯さんの保険の担当として、これからも長くお付き合いさせていただきたいと思っていますが、僕はフルコミッションの営業マンなので、次のお客様に繋がっていかないとこの仕事を続けることができません。だから、ぜひ、お知り合いの方をご紹介いただきたいんです。

 正直、厳しい仕事ですが、僕は、保険というものを通じて、お客様の大切な人生のお役に立てることに、ものすごいやりがいを感じていますし、いろいろな方々とご縁をいただけるのを心から楽しんでいます。

 僕は、保険を売りたいとは思っていません。

 ただ、僕自身、保険というサービスに助けられたことがあるんで、ご紹介いただいた方の助けになるような情報をお伝えしたいんです。保険に入るかどうかはお客様が決めることなので、僕の仕事は有用な情報をお伝えすることだけです。

 でも、僕が街中で声をかけても、普通の人は保険の話なんて聞いてはくれません。だから、会うまででいいので、◯◯さんの力を貸していただきたいんです」

“超一流の営業マン”は、お客様に「配慮」はするが、「遠慮」はしない写真はイメージです。 Photo: Adobe Stock

「頑張っている姿」を効果的に見せる

 このようにお願いをすると、多くのお客様は「なんとか力になってあげたい」と思ってくださいました。ただし、おそらく次の二つの条件を満たしていなければ、そうは思ってくださらなかったと思います。

 第一の条件は、僕が京大アメフト部時代の「挫折」を乗り越えるために、そして、TBSという“看板”に頼らずに生きていける人間になるために(詳しくはこちら)、「日本一の営業マンになろう」と必死になっていることに共感をしてくださっていることです。

 だからこそ僕は、お客様との面会のなかで、日中は営業に駆けずり回り、夜中まで会社でコツコツと仕事をして、寝袋にくるまって会社に寝泊まりするなど、必死になって頑張っていることを折りに触れて「自己開示」してきました。

 また、次回のアポイント調整をするときには、手帳の中身をわざとお見せしていました。ぎっしりと予定の書き込まれた手帳をお見せすることで、アポイントを直前に変更するのは僕にとって“酷”なことであると認識していただくとともに、「こいつは本当に頑張っている」と認識していただくためでした。

 あるいは、僕は、夜中にお客様のメールを用意しても、すぐに送るのではなく、わざと真夜中の2~3時に送ったり、早朝の6~7時に送るようにしていましたが、それも、僕が頑張っている様子を効果的に見せるためでした。

 もちろん、これらはあくまで「演出」にすぎません。当たり前のことですが、お客様と心のこもった丁寧なやりとりを徹底したり、保険プランの提案書をしっかり作り込んだり、お客様のご要望などに誠実に対応したりするなど、目の前の仕事をコツコツとやり続けることでこそ、その「演出」は生きてくるのです。

 お客様は、営業マンの言動に敏感です。

 特に、生命保険のように高額な買い物をされるときには、営業マンに対して警戒心を持ちながら接するものです。営業マンの言動に、わずかでも矛盾やごまかしがあれば、それを敏感に嗅ぎ取って距離を取り始めます。だから、とにかく愚直に仕事に向き合うことこそが、何よりも大切だということです。

 そして、そうだからこそ、お客様が「こいつは本当に必死で頑張っている」と認めてくださったときには、「なんとか力になってあげたい」と心から思ってくださることが多いとも言えます。

 特に、ご自身が必死で頑張って何事かを成そうとしている、あるいは成し遂げたような方は、全力で応援してくださるケースが多かったように思います(そういう方は、こちらの「本気度」を評価する目も厳しいですが……)。