ANAがJALに社債発行条件で勝利、その裏にある「ゆがみ」の正体Photo:photolibrary

航空大手2社が同じタイミングで社債を発行したところ、その金利に不自然な逆転現象が起きた。財務状況は日本航空がANAホールディングス(HD)に勝るにもかかわらず、ANAHDの金利の方が好条件だったのだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

6月発行の社債で金利差
ANAが勝ち、JALが負けた

 ANAホールディングス(HD)日本航空(JAL)が6月上旬に相次いで社債を発行した。両社の社債の発行条件を比較すると、一言で言えば「ANAHDの勝ち、JALの負け」となった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で大打撃を受けた両社は、資金調達を繰り返してきた。現時点で当面の資金ショートを回避するだけの手元資金を確保してはいる。それでも後ろ倒しにしてきた設備投資だったり、金融機関からの借金の返済だったりがある中で、両社は社債によるさらなる資金調達を実行した。

 社債は企業が資金を調達するために投資家に発行する債券で、企業は償還(返済)期日までに返済する。つまり借金の一種だ。

 金融機関から借金するときと同様に、社債を発行すれば金利が発生する。その利率は発行する企業の財務状況、信用力、事業環境などによって決まる。これらの要素が良い状態の企業は金利が低くなり、悪い状態であれば金利は高くなる。

 格付け会社による信用力評価では、ANAHDとJALは同じ格付け。事業環境も同じ。財務状況については、有利子負債を多く抱えるANAHDの方が厳しい。ゆえに、2社の間で金利に差がつくとしたら、JALの方が金利は低くなるのが自然だ。

 ところが現実は異なった。今回発行した社債において、ANAHDの方がJALよりも金利が低い。つまり条件面でANAHDが勝ち、JALが負けた。

 なぜこのような逆転現象が起きたのか。