時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。
ERPの背景にある思想は、
欧米企業のマネジメントを基本とした「計画主義」
先日耳にしたことですが、証券アナリストの間でちょっとした話題になっているのが、「ERPを入れると、なぜ会社の成長が止まるのか」だそうです。
もともと日本企業では都度の経費を使う申請をする際に上長が、「この出張は必要なのか」「なぜ、これを購入する必要があるのか」などを「口うるさく」チェックし、下も「いちいちうるさいなあ」と思いつつも必然性を説明していました。
そして経費を使った後もその成果について報告を行い、結果として、経費を使った打ち手と効果検証のPDCAが廻る「躾」がなされることが一般的でした。
一方、ERPの背景にある思想は、欧米企業のマネジメントを基本とした「計画主義」です。計画立案の精度の高さがありきで、その際の予算配分はトップ、上層部の意志のもとに展開されていきます。
つまり前述の「人治」式マネジメントを前提に、社内で期待される部署が予算を持ち、マネジャーの裁量でそれを使って腕を振るう考え方です。よって、ここでのポイントは予算の立案精度であり、有能で有効に使い、結果を出してくれる人材にはふんだんに「弾(タマ)」となる予算を持たせます。
ところが、日本企業の場合はERPを導入しても、経営層の強い意志が反映されないままに単に前年実績に基づいて予算配分が行われ、いったん獲得した予算はまるで自部署の既得権益のようになります。かけた経費の効果確認は本来、基本なのですが、「人、性善なれど、性怠惰なり」で、獲得した経費については、今度は「消化」が義務のようになっていきます。
ERPが導入されて、期末が迫ると「来年の予算が減らされないように、経費は全部使っておけ」との指示が降りてきて、かくして毎年期末になると何やら備品が増えていくようになった企業も存在します。かつて「期末になると道路工事が増える」との指摘がありましたが、計画主義に基づくシステムの導入により、同様のことが企業でも起き始めたのです。
米国文化には「べき論」を追求し、イニシアティブを尊重する価値観が強く、それを前提としたマネジメントシステムになっています。実際にERPを提供するベンダーと話をすると「社内の業務をERPの思想に合わせるかどうかがポイントです」と説明がなされます。